立ち方・刀の握り方など基本の基本

兵法二天一流玄信会に入会すると、最初に、二刀流を身につけるための身体を創出する目的で「前八」という鍛練を行います。これは、勢法(型)以前の鍛練です。しかし、この前八以前にも知って置かなければならないことがあります。

ここでは、最初に知っておかなければならない、基本中の基本である、立ち方、刀の握り方、構えなどについて説明します。

1章:立ち方

(1)正中線の意識

稽古中は常に立っているのですが、この立っているという姿勢は、普段通りの適当なものではいけません。

まず、常に正中線を意識し、天から頭の真ん中に糸がつながり、そこから引っ張り上げられているような意識を持つことが大事です。上から引っ張り上げられるような感覚で、全身に正中線を意識します。正中線は、身体の真ん中にある意識のラインのことで、頭頂部の中心から、身体の中を真っ直ぐ通って会陰から抜けます。身体の内部だけではなく、天から地面の奥底まで繋がっているものとして意識することが大事です。

このように正中線を意識することで、全身が真っ直ぐになり、余計な緊張がなく立てることが大事です。十分にリラックスし、身体のどこにも力みがないような状態が理想です。真っ直ぐなっていなければ、どこかに余計な力みが生まれますので、その部分を意識して力を抜くようにすることが大事です。

(2)脛骨に体重を乗せる

上記の意識を持ち、重心は脛の脛骨側の真下に落とします。脛の骨は内側に脛骨(けいこつ)外側に腓骨(ひこつ)があるのですが、体重を支えるのは内側の脛骨です。そのため、この脛骨に体重を乗せることで、余計な筋肉の緊張がなく体を支えることができます。そして、その真下の足の部分、土踏まずより踵側あたりに重心が乗ります。踵やつま先に重心が乗り、前傾したり、後傾したりする姿勢にならないようにしましょう。脛骨の真下に主に重心が乗り、母指球にも少し体重が乗るくらいが良い姿勢です。

(3)腰・背中

全身をリラックスさせた立ち方だと書きましたが、力を抜いてダラっとしたら良いわけではありません。むしろ、普通の人は力を抜くと、骨盤を後傾させ背中を丸めてしまう傾向があるように思いますが、そのような姿勢になってはいけません。骨盤は真っ直ぐたて、反らず、丸めず、背中も背骨が自然なラインを作るように真っ直ぐにしましょう。この姿勢を取った上で、可能な限り力を抜くことが大事なのです。

(4)胸背部

真っ直ぐ立つというと「気をつけ」の姿勢を取りたくなるかもしれませんが、これも自然な姿勢ではありません。余計な力が入ってしまっています。そのため、まずリラックスした上で、肩甲骨が自然に開いて胸は張らず、少し凹むような形になるのが良い姿勢です。実際には、胸の厚みなどには個人差がありますが、人から見たときに明らかに凹んでなければならない訳ではありません。そうではなく「胸を張る」という意識を持たず、むしろ胸の力を抜いて肩甲骨が開くような感覚があることが大事です。

胸を張ると、肩甲骨を背中側で寄せることになります。これでは、胸が緊張し、肩甲骨周りにも余計な力が入り、可動域が狭くなってしまいます。そのため、胸、肩、背中の力を抜いていきましょう。

このように力を抜くと、横に垂らした手が自然に腿につくと思います。力んでいると手が腿から離れてしまうのため注意してください。力を入れて無理に腿に手をくっつけるのではなく、力を抜くことで腿につく状態になるのが良い姿勢です。腿に手が触れるかどうかは、1つのチェックポイントとして考えてください。

(5)首

首も正中線を意識することが大事ですが、これも「気をつけ」の姿勢のように顎を引いて首を緊張させるような姿勢は良くありません。首も適度にリラックスさせ、顎は引きすぎないことが大事です。かと言って頭が前に倒れると、正中線から外れてしまいますので、これも良くありません。

立ち方については、『五輪書』にも記載がありますので、読んで確認してみてください。

2章:刀の握り方

前八では、刀を持って鍛練を行います。そのため、最初に刀の握り方について知っておかなければなりません。

まず、基本的な握り方としては『五輪書』に書かれている通りです。小指、薬指を絞めて、基本的にはこの2本の指だけに力を入れて振ります。親指と人差し指は、触れる程度で力を入れません。ただし、親指と人差し指が常にくっついていることが大事で、離れてはいけません。中指はそれぞれの中間くらいの強さで握ります。

刀の握り方としては、他にも注意点があります。それは、刀の刃と手指の向きを一致させるということです。

まず、刀の峰側が親指と人差し指の真ん中、いわゆる「合谷」と言われるツボの部分と一致するように刀を持ちます。こう握ると、刀の刃の向きが握った手の指の第二関節の向きと一致すると思います(手の大きさによって若干変わるかもしれませんが)。そして、この向きで握った上で、掌の小指側の端、手首の付け根の上にある骨の部分、「豆状骨」と言われる部分と柄の峰側を合わせます。この部分のことを「枕」とも言います。このように「枕」で柄の峰側を押さえることによって、刀を振って止めるときに、この骨の部分で勢いを止めることができるのです。

このように握った上で、手の内と体幹が「下筋」によって繋がっている意識を持つことが大事です。

下筋とは、手の小指側から前腕の尺骨側(小指側)を通り、肘の内側を通り、脇の下から背中に抜けていくラインのことです。この意識を持つことで、刀の重みを活かして、大きく伸び伸びと斬ることができるのです。逆に、反対側にあるラインを「上筋」と言います。この上筋に力を入れてしまうと、腕に余計な力が入り腕力だけで刀を振ろうとしてしまいます。刀の軌道も小さくなってしまいますので、上筋には力を入れず下筋に力を入れるよう意識してください。

また、刀を握るときは、両手で一刀を持つ場合も「二刀を持っている」という意識でいることが大事です。なぜなら、二天一流は二刀流の流派であり、あらゆる鍛練を二刀の鍛練として行わなければならないからです。そのため、両手で一刀を持つときも、右手に一刀、左手に一刀を持っているという意識で持つようにしてください。

3章:基本的な構

二刀の構は、前八の中で「五法乃構」として鍛練します。しかし、一刀での構もありますので、最初に覚えておくことが大事です。どの構も、ただなんとなく刀をその形で持つのではなく、「斬る」「攻撃する」という強い意識を持って構えることが大事です。

(1)正眼

正眼の構は、一刀での最も基本的な構です。両手で刀を持ち正面に構えます。剣先は自分と同じ身長の敵(仮想敵)の目の間(目間)に置きます。通常、人間は目にも「きき目」があり、右目か左目のどちらかをメインに使って見てしまいます。このような見方で構えると、剣先が目間からずれてしまいます。そのため、目間に剣先が来ているかよく注意してください。

また、自分から見て峰が中心に見えていれば良いのですが、どちらか一方の刀の側面が見えているのであれば、刀が倒れているということですので、これも間違った構です。

手の内は上述の握りで、手首が「死に手」にならないことが重要です。死に手とは、手首に余計な力が入って90度近くに立っている状態や、手首を倒してしまっているような状態です。他流や剣道では、手首を倒して剣先を伸ばすように構えることもありますが、このような構は東流では死に手です。二刀を「中段」に構えたとき、手首は自然に伸びすぎず、曲げすぎない形になりますが、正眼の構でも同じような形になります。

さらに、肘も曲げず真っ直ぐに伸展させた状態です。そして、剣道の「茶巾絞り」のように肘を絞ることもしません。「茶巾絞り」だと肘関節が真下に向く形になりますが、そうではなく、肘関節がやや体の外側を向くような形になります。

また、ここでも胸を張らないことが重要です。胸を張るということは、肩甲骨を背中側で寄せるということです。このような形にすると、肩中心の動きになり、振りが小さくなり、肩の筋力中心の動きになってしまいます。胸を張らず、肩甲骨を寄せず、むしろ肩甲骨が前に伸びるように構えることが大事です。こうすることで、胸背部つまり体幹を大きく使って刀を振ることができるのです。

もちろん、ここでも下筋を効かせてください。

(2)上段

上段の構は、頭上に刀を構える構えです。

正眼から頭上に刀を持ち上げ、前から見ても横から見ても、刀が45度くらいの角度になるようにしてください。このとき、左拳が自分の額の真上に来るようにします。両肘は開きすぎてはいけませんが、狭く閉じすぎると窮屈になるため、自然に力を抜いて構えることが大事です。

(3)八相

八相の構は、刀を自分の頭の右側に掲げる構です。これも、型の中でよく使います。

刀を頭の右側に構え、前から見たときには刀が垂直になるように、横から見た時は刀が60度くらいの角度になるように構えます。そして、右手は右耳の横に持ってきて、右の親指で右耳を触れるくらいの位置にします。左手はこの右手の位置と刀全体の角度を注意すれば、自然に位置が決まるはずですが、初心者の場合、左手がやや顔寄りに傾き、刀全体が前から見たときに斜めになってしまうことがありますので、注意してください。

(4)脇構

脇構は、半身になって刀を体に隠すように構えるものです。真っ直ぐ立って正眼に構えたところから、片足を大きく引いて半身になり、足の動きと同時に刀を引いて脇構になります。

脇に構えたとき、刃の向きは下ではなくやや横向きにします。右拳が右の股関節の前にくるようにし、左拳は自然に股のあたりになります。刀は地面と水平くらいに構えます。剣先が上向きすぎたり、下向きすぎたりするのは不自然です。刀は、正面から見たときに自分の身体に完全に隠れ、柄頭のみが敵から見えるようにします。慣れないうちは刀が隠れていなかったり、刀を引きすぎて反対側に出てしまったりすることがありますので、注意してください。刃の向きや刀の角度に決まりがあるのは、これ以外の形になると、ここから素早く斬るときに、刃が寝てしまったり、軌道が不自然になりやすいからです。脇構は不意打ちの構ですので、瞬時に動いたときに最高の斬撃が可能になるように、構えておくことが重要です。

(5)下段

下段の構は、右手に刀を持ち、だらっと腕を下げた状態です。左手は自然に身体の横に垂らし、右手も刀を持って同じように垂らします。力を抜くことで、剣先は自然に内側を向きます。両足は軽く開いて真っ直ぐ立った状態です。二刀を持って下段に構える二刀下段とほぼ同じ形で、これを片手下段とも言います。

これらが、一刀における基本的な構です。

どの構においても、重要なのが手の内をゆるめないことです。流派によっては、構え方によってはどちらかの手をゆるめることもあるようです。しかし、二天一流はあくまで二刀流の流派ですので、どの構も二刀のつもりで握ることが重要です。二刀のつもりで握るのであれば、一方の手をゆるめるという発想にはならないはずです。例えば、上段、八相などは手の内を崩して握りやすい構ですが、これらも手の内をしっかりと揃えて握ります。

4章:歩き方

兵法二天一流では、歩き方にも特徴があるため練習が必要です。

通常、現代人は歩くときに地面を蹴って推進力を生み出して歩いています。しかし、当流を含む多くの古武道では地面を蹴らずに前進します。これは、地面を蹴るという動きを行うと、相手に動きを読まれやすく動きが遅くなるためです。そこで、当流では独特の歩き方をします。

そもそも、二天一流における歩き方には、相手との間合いを詰める「歩足」、斬りかかりにいく踏み込みである「懸り足」、斬りの踏み込みである「切り足」があります。そして最初の段階で鍛練するのが歩足です。

まず、普通に私たちが歩く時、どのように足を使っているでしょうか?まず、片足に体重を乗せ、もう片方の足を腿の筋肉や腹筋で吊り上げ、前に重心移動しながら1歩踏み出す、という動きではないでしょうか。これに対し、歩足では、最初に片方の足(軸足)に体重を乗せません。重心を身体の真ん中に落としたまま、前に出す方の足の膝の力を抜き、すり足で前に踏み出します。この踏み出す足に最初から重心を乗せています。したがって、膝を緩めるのと、前に重心移動するのが同時です。軸足に体重を乗せて、足を引き上げて踏み出そうとすると、歩みが2拍子になりますが、このように足を動かすことで、1拍子で進むことができます。また、身体が前方に倒れこむ力を使って進むため、地面を蹴る必要がありません。その分、筋力に頼らず疲れにくい上、予備動作がなく相手に悟られにくいのです。

1歩の足幅は、大きくは踏み込まず自然に踏み込める足幅にします。このように1歩踏み出し、片足を着地させたら、すぐに次の足を踏み出します。これを連続させることで、前進していくのです。歩足で連続して進むと、膝を軽く曲げたまま、身体が上下せずスライドするように前方移動するような形になります。

最初はなかなか難しく、形を真似ることはできても、うまく足を使えず地面を蹴ってしまうかもしれません。また、正中線を左右に揺らしてしまったり、身体を上下動させることもあると思います。しかし、繰り返し鍛練すればうまくできるようになりますし、この動きが他の足遣いにもつながっていきますので、しっかり練習してください。

5章:礼法

戦うための技や身体操作とは異なるものと思われがちですが、礼法を正しい形で行うことも重要です。礼法の動作にも、それぞれ意味があるのです。

(1)立礼

まず、立った状態での礼ですが、股関節に横串を刺すように軸が通っている意識で、股関節から折り曲げて礼をします。そこ以外の部分は曲げません。つまり、背中を丸めるようにして礼をしてはいけません。また、礼をしたときに尻が後ろに出るようではいけません。正中線を真っ直ぐ通したまま、上半身だけが股関節を軸に曲がる形です。

この時、目線は敵から離さず隙を見せないようにしてください。

手は身体の横に垂らし、指まで伸ばします。ただし、勢法の中では指は真っ直ぐに伸ばさず自然に丸めるようにします。

(2)座礼

座礼の場合、まず骨盤を立てて真っ直ぐ上から吊り上げられる意識を持って、正座します。尻の下で足を深く組まないようにし、両膝の間は拳2つ分ほどあけます。掌は大腿骨の真ん中あたりに乗せます。この状態から、今度も、股関節に横串を刺すように軸が通っている意識で、股関節から上半身を前に倒して礼をします。手は、左手から床に置き、次に右手を置き、両手の人差し指、親指で三角形ができるように手をつきます。この手をつく動作と同時に礼をします。礼をしたら、上半身を起こしつつ、右手、左手の順番で手を腿の上に戻します。

礼をするときは右手を後に、礼をした後は右手を先に動かすのは、できるだけ身体の近くに右手を置いておきたいためです。右手は、左にある刀を即座に抜けるようにしておかなければならないためです。

(3)座り方

座礼をする前に立った状態から座りますが、このとき、座り方にも順番があります。まず、二刀を左手に持って左腰にあて、片膝ずつついて正座になります。このとき、左膝が先に地面につくのですが、地面につく前に右手で袴の左の裾を払い、次に右の裾を払います。これは瞬時に「ぱぱっ」と払うイメージです。裾を払うことで、正座したときに足の裏の上に裾が乗らないようにするためです。裾が足の裏に乗ると立ち上がるときに引っ掛けてしまうことがあるのです。

払ったらすぐに正座し、姿勢を整えると同時に、二刀の木剣を自分から見て身体の左側に置きます。刀の刃が外を向くようにし、二刀ある場合は小太刀が自分の身体側に来るように揃えて置きます。二刀の柄頭も揃えて、自分の膝と同じラインに来るようにしましょう。置く順番としては、左手で小太刀、太刀の順番で置いて、置いた後ズレていたら軽く整えるようにしましょう。

(4)立ち上がる動作

正座から立ち上がるときは、正座のまま左手で太刀、小太刀の順で二刀を持ちます。持つ位置としては、太刀の刃の部分で、親指が鍔に当たる部分に触れるくらいの位置です。この二刀を、正座をしたまま腕を真っ直ぐ前に出して、自分の前に垂直に立てます。そして、この二刀に体重を預けることなく立ち上がります。

立ち上がり方としては、土台創りと同様の動きです。膝立ちになると同時に右足を前に出し、同時に左足首を立て、左膝を伸ばす動きによって立ち上がり、左足が伸びきったらすぐに足を揃えて自然に立ちます。

(5)刀の持ち歩き方

刀を左手に持って移動するときは、必ず、前述のように二刀の柄頭を揃え、太刀が外側、小太刀が内側に来るように持ち、刃を上に向けてください。そして刀を腰に指すように、二刀を持った左手を左腰に当てておきます。

勢法を行うときの作法については、それぞれの勢法について解説するページの中で説明します。

6章:戦う意識

ここまで具体的な動作について説明してきましたが、稽古時には常に意識しておくべきことがあります。それは、道場は戦場であるという意識です。これは、私が宮田先生から初期の頃によく言われていたことです。

兵法二天一流は、二刀を用いた真剣勝負を本質とします。人間は認識的な存在ですので、稽古するときにどういう意識を持って行うかによって、その技の出来栄えが全く違ってくるものです。「これはただの練習である」という意識で練習すれば、練習の場でしか使えないような技にしかなりません。また、人間の精神は、その技によって規定されるものでもあります。そのため、意識の低さがレベルの低い技を創り、またレベルの低い技が低いレベルの意識(精神=心)を創っていくということになっていってしまいます。

そのため、どのような稽古を行うときも「ここは戦場である」「真剣勝負で戦うためにこの稽古をしている」という意識を持ち続けることが大事なのです。

ここで解説したのは、前八以前の基本中の基本の内容ではありますが、その中でも、常に戦う意識を持つように意識するようにしてください。

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