鍛練体系

二天一流玄信会の鍛練体系

兵法二天一流玄信会では、以下のような流れで鍛練を行っています。

  1. 前八
  2. 抜刀術
  3. 勢法一刀之太刀
  4. 勢法一刀小太刀
  5. 勢法二刀合口切差
  6. 勢法二刀合口漆膠
  7. 勢法二刀合口奥義
  8. 勢法五法之太刀

それぞれの鍛練を繰り返し、積み重ね、さらに前八〜五法之太刀の全体の流れをさらに繰り返し積み重ねて鍛練することで、何度も基本に立ち返りながら技を練っていきます。

それぞれの鍛練・型の内容について、詳しく解説します。

前八

前八(まえやつ)とは、二天一流の鍛練を行う上でもっとも基礎となる八種類の鍛練法のことです。

【五法之構】

五法之構は「中段」「上段」「下段」「左脇構」「右脇構」の5つの構えの鍛練法です。一つ一つの構えを個別に鍛練するのではなく、すべての構えが一つの太刀筋としてつながっているように行うことが重要な点です。

【調息法】

調息法は「天位直通」「切先返し」「陰陽交差」「流水」の4つからなります。呼吸に合わせて二刀を操ることを体に覚え込ませていきます。

【拳創り】

拳創りは、片手に一刀ずつを持つ二刀流である二天一流ならではの鍛練法です。重い刀を片手で振ることを可能とする手の内を創ることに主眼があります。

【土台創り】

土台創りは、足を広く開き、体を一重身にし、重心を低く落とした「二天一流の足構え」の鍛練法です。激しく組太刀を行ったときもしっかり「二天一流の足構え」が取れるように稽古します。

【膝行】

二天一流の特徴は「一重身から一重身への転換」という体捌きにあります。膝行はこの動きを身につけるために行うものです。

【多敵之位胸背部開発法】

重い刀を片手で振るためには、腕力に頼った振り方ではなく、体幹を使って振る必要があります。多敵之位胸背部開発法では、胸と背中を大きく横運動させることで、胸背部を柔軟に使えるようにする鍛練法です。

【喝咄胸背部開発法】

多敵之位が胸背部の横運動だったのに対し、喝咄では胸背部の縦運動を行う鍛練法です。「喝」で二刀を切り上げ、切先返しし、「咄」で二刀を振り下ろす動きを連続的に行います。

【基本練技】

基本練技とは、組太刀での稽古に入る前に、兵法二天一流の基本となる動きを身につけるために行われる鍛練法です。第9代宮川伊三郎規心が考案した「基本技」の7本に、第11代宮田和宏師範が「受流し」を追加した8本からなります。

  1. 一本目・縦抜打ち
  2. 二本目・横抜打ち
  3. 三本目・下抜打ち
  4. 四本目・正面切り
  5. 五本目・袈裟切り(左・右)
  6. 六本目・受流し(左・右)
  7. 七本目・切り上げ切り返し
  8. 八本目・折敷飛違い正面切り

詳しくは、以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系①】前八(まえやつ)で身体操作・身体創りをする

抜刀術

兵法二天一流玄信会の抜刀術は、第9代宮川伊三郎が関口流抜刀術から導入した「木剣術操法」が元になっています。第11代宮田和宏は師範は、これを真剣を使っての稽古法として以下の10本を考案しました。

  1. 一本目・懸之先
  2. 二本目・待之先
  3. 三本目・躰々之先
  4. 四本目・一重身
  5. 五本目・切先返
  6. 六本目・受流
  7. 七本目・張受
  8. 八本目・袈裟斬り
  9. 九本目・片手突き
  10. 十本目・是極一刀

抜刀術の鍛練には、大きく2つの目的があります。

1つは、真剣を使った鍛練を行うことで「真剣を扱う意識」を創っていくことです。真剣を使った実戦が遠い非日常にある現代では、まずは「触れれば切れる」という真剣を扱う意識から創っていく必要があるのです。

もう1つの目的は、剣術の稽古にある大きな矛盾を解決することにあります。それは剣術の本質は「命をばかりの打ち合い(=殺し合い)」にあるにも係わらず、稽古で相手を傷つけることはできないということです。

稽古において相手を傷つけることはできないため、実際には組太刀では木剣が相手の体に触れる寸前で「止め太刀」する必要があります。しかし、この「止め太刀」でいつも稽古していると、技が「相手の体の寸前で止めるもの」として「技化」してしまいます。これでは実戦で戦うことができない技になってしまいます。

そこで、組太刀とは別に抜刀術を行うことで、一人型として十分な斬撃の稽古を行い、この稽古における矛盾を解決することができます。

詳しくは以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系②】抜刀術で日本刀を扱う意識と「勝負心」を養う

勢法一刀之太刀

二天一流玄信会における組太刀は「勢法一刀之太刀」からはじまります。これはその名の通り、一刀を用いた組太刀の型です。勢法一刀之太刀からが細川家伝統兵法二天一流の本来の型です。

以下の12本の型があります。

  1. 一本目・指先
  2. 二本目・八相(左)
  3. 三本目・八相(右)
  4. 四本目・受流(左)
  5. 五本目・受流(右)
  6. 六本目・捩構
  7. 七本目・張付
  8. 八本目・流討
  9. 九本目・虎振
  10. 十本目・数喜
  11. 十一本目・合先打留
  12. 十二本目・躱打

一刀の型は、持つのは一刀であっても「右手に一刀」「左手に一刀」を持つ、つまり二刀を持つ意識で行うことが重要です。一刀も二刀の稽古として行うというところに、二天一流の特徴があります。

詳しくは以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系③】勢法一刀之太刀で一刀を「二刀」として鍛練する

勢法一刀小太刀

勢法一刀小太刀は、小刀を用いて行う組太刀です。型としては勢法一刀之太刀を小太刀に応用したもので、以下の7本があります。

  1. 一本目・指先
  2. 二本目・中段
  3. 三本目・受流
  4. 四本目・捩構
  5. 五本目・張付
  6. 六本目・流討
  7. 七本目・合先

二天一流の体捌きの特徴は「一重身から一重身への転換」です。勢法一刀小太刀は、この「一重身から一重身への転換」を稽古する上でとても重要な型です。

詳しくは、以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系④】勢法一刀小太刀で一重身を鍛練する

勢法二刀合口・切差

勢法一刀之太刀、勢法一刀小太刀を経てようやく二刀の型に入ります。二刀合口の特徴は打太刀・仕太刀共に「無構」からはじまることです。仕太刀は二刀下段、打太刀は一刀下段に構えたところからすべての型がはじまります。二刀合口切差は、二刀合口の中でももっとも基本的な動きを鍛練するもので、以下の5本から成ります。

  1. 一本目・切差打留
  2. 二本目・切差払斬
  3. 三本目・一拍子外払
  4. 四本目・一拍子内払
  5. 五本目・流水打留

勢法二刀合口・漆膠

勢法二刀合口切差の次に、漆膠(しっこう)の型に入ります。「漆」や「膠」のように敵にべったりとくっついて離れないような「入身技」で構成されているのが特徴です。以下の5本から成ります。

  1. 一本目・漆膠之突(左)
  2. 二本目・漆膠之突(右)
  3. 三本目・入身
  4. 四本目・石火之打
  5. 五本目・十字愁猴之身

勢法二刀合口奥義

勢法に当合口は「奥義」までの十四本で構成されています。ただし、この奥義4本は勢法五法之太刀を修得した後に口伝で伝えられるものです。また、他の勢法のように組太刀でもありません。

  1. 一拍子
  2. 二之越
  3. 流水
  4. 紅葉

勢法五法之太刀

勢法五法之太刀は、兵法二天一流玄信会の最後の型(勢法)です。二天一流における五つの構えから技を繰り出すもので、構えの名前がそのまま型(勢法)の名前になっています。

  1. 一本目・中段
  2. 二本目・上段
  3. 三本目・下段
  4. 四本目・左脇構
  5. 五本目・右脇構

以上が兵法二天一流玄信会の全ての型です。

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