二天一流剣術の小太刀7

鍛練体系

【二天一流剣術の体系④】勢法一刀小太刀で一重身を鍛練する

これまで、二天一流玄信会の体系について「前八」「抜刀術」「勢法一刀之太刀」と解説してきました。

二天一流玄信会では、

前八→抜刀術→勢法一刀之太刀→勢法一刀小太刀→勢法二刀合口→勢法五法之太刀

という順番で学んでいきますので、この記事では、小太刀(小刀)一本の勢法(型)である勢法一刀小太刀について、動画・画像付きで解説します。

すべての勢法(型)の動画、画像を付けていますので、参考にしながら読んでください。

会員の方は知識の整理や復習として、二天一流に興味がある方は、どのような技があるのか参考として見て頂ければと思います。

勢法一刀小太刀の役割

勢法一刀小太刀は、本来は二天一流においては正規の型の体系には入っておらず、付属的な扱いだったようです。

しかし、二天一流玄信会では、正規の体系に組み入れられています。私自身も、勢法一刀小太刀の後にすぐ小太刀の体系を学び、また古武道振興会の大会でも演武した記憶があります。

なぜかと言うと、勢法一刀小太刀には、これから説明するように、小太刀だからこそできる鍛練があるからです。

勢法一刀小太刀は、小太刀という短い刀(木剣)を使った勢法(型)です。そのため、一刀よりも狭い間合いで戦わなければなりません。

打太刀の間合いに対して、より深く入身(半身で間合いを詰めることです)をすることになります。したがって、より近い間合いまで踏み込む入身の鍛練ができる、という役割があります。

また、小太刀の勢法(型)も他の勢法(型)と同様に、前進する時に一重身から一重身に転換します。しかし、小太刀はより間合いが近くなるため、他の勢法(型)と比べても、さらに意識して一重身から一重身へ転換する必要があります。

それに加え、勢法一刀小太刀は体術に近い間合いで行う上、直接左手で敵の体を押さえに行く技法が含まれているため、護身術として応用できる利点もあります。

整理すると、勢法一刀小太刀の役割には、

  • 深い入身の鍛練
  • 一重身から一重身への転換
  • 護身術になる

というものがあるのです。

勢法一刀小太刀のポイント

さて、勢法一刀小太刀の具体的な技法の解説に入る前に、勢法一刀小太刀の鍛練を行う上でのポイントを解説します。

ポイントは、以下のものです。

  • 小太刀を大刀、左手を小刀の二刀の意識で鍛練する
  • 一重身から一重身への転換を意識する
  • 間髪入れずに技を行う

順番に解説します。

小太刀を大刀、左手を小刀の二刀の意識で鍛練する

勢法一刀小太刀は、小太刀を右手に持ち、左手は素手です。

しかし、これまでも繰り返し解説してきたように、二天一流の体系はすべて「二刀の鍛練のため」として構成されています。小太刀の勢法(型)も、例外ではありません。

そのため、右手の小太刀を大刀として、左手の素手を小刀と意識して鍛練することが大事なポイントです。この意識を、小太刀の鍛練を行う中で常に持ち続けることが大事です。

一重身から一重身への転換を意識する

最初にも触れたように、勢法一刀小太刀は一刀よりも近い間合いになるため、一重身から一重身への転換をより意識的に行うことが大事です。

一重身が効いているかどうかは、それぞれの型の中で分かります。

たとえば、一刀の型の中では左手で打太刀の手首を押さて、打太刀の動きを封じる技法が多用されます。この左手での押さえは、正しく一重身になり、後ろ足で地面を押す力がまっすぐ左手に伝わるようになっていないと効きません。

一重身ができていないと、左手の腕力で押さえることになるため、力が弱く簡単に敵に外されてしまいます。一重身ができていれば、左手の力はほとんど入れていなくても、しっかり押さえることができます。

正しい姿勢の一重身ができていれば、押さえられただけで打太刀は姿勢を崩してしまうこともあります。

このように、小太刀の勢法(型)の中では、一重身が効いているかどうかを厳しくチェックすることができるため、他の勢法(型)よりも、より意識して鍛練しやすいのです。

小太刀で一重身の姿勢および、一重身から一重身への転換を鍛練すると、二刀の勢法(型)に入った時に、技の上達がより早くなります。

間をあけないように技を行う

繰り返しになりますが、小太刀は一刀に比べて間合いが近くなります。

技の構造としては、勢法一刀之太刀と同様のものも多いのですが、間合いが近いためその分打太刀より素早く動かなければなりません。

そのため、前進するときは、打太刀が出る瞬間を捉えて、それより先に間合いを詰め、深く入身できるようにします。

また、技と技の間も間をあけず、間髪入れずに動き、受け、突くことができるように意識して鍛練します。

組太刀と一人型を区別する

勢法一刀小太刀も、勢法一刀之太刀と同様、組太刀の型と実戦を区別しなければなりません。

組太刀では、打太刀がいるため技を変化させなければならないのですが、小太刀の勢法(型)はあくまで「一重身から一重身への転換」の鍛練として行うことが大事であるため、一人型として鍛練する場合は、身体を左右に捌くことなく、進行方向に向かって一直線の線上で勢法(型)を行います。

打太刀をつけて行うと、一直線の線上で勢法(型)することは難しく、また間合いも詰まるため、多少は足を入れ替えて調整する必要が出てきます。

しかし、あくまで一人型の動きが正しいものとして、一重身を崩すことなく、最大限に鍛練するのがポイントです。

【動画】勢法一刀小太刀の技の解説

それでは、これから勢法一刀小太刀の勢法(型)の具体的な内容について解説していきます。

一本目:指先(さっせん)

指先は、勢法一刀之太刀の指先と同じ技を小太刀で行うものです。

二天一流剣術の小太刀1

流れは、右足から3歩進み、3歩目と同時に敵の首元を突くという技です。組太刀で行う場合は、3歩目で打太刀の正面切りを右に体を捌いてかわしつつ、打太刀の首のギリギリ横を突きます。

指先のポイントは、できる限り素速く間合いを詰め、相手に深く入身をかけて突くことです。

深く入身をかけることは、他の勢法(型)でも同様なのですが、他の小太刀の勢法(型)は受け→攻撃という流れなのに対し、指先のみ受けなしでいきなり攻撃する型です。そのため、他の勢法(型)よりも、より速く、深く間合いに入り込み、突くことが大事なのです。

二本目:中段

中段は、敵の攻撃を半身でかわし、即座に敵の腕を斬り、押さえ、喉元を突く勢法(型)です。

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小太刀で中段に構えたところからはじめる点に、他の小太刀の勢法(型)との違いがあります。

流れは、中段に構え、左足から3歩進み、3歩目で打太刀が斬ってくる太刀を、左の真半身(一重身)になり、両足を揃えつつかわします。この時、中段に構えた小太刀は、太刀をかわして身体に密着させます。

かわしたら即座に右の真半身になりつつ、小太刀を大きく使って正面にいる打太刀を斬ります。一人型の場合は、真っ正面を斬りますが、組太刀の場合は、近間に打太刀がいるため、やや斜め前方に斬ることになります。斬る位置は打太刀の手元です。

斬ったら、即座にさらに身体を右の真半身へと転換し、左手を大きく正面に突き出し、小太刀で打太刀の喉元を突きます。

一人型の場合は、左手を手刀にして大きく前方を斬るように突き出しますが、組太刀では、近間にいる打太刀の腕をつかみにいきます。

中段のポイントは、近間の打太刀に対してもしっかり一重身になることです。

打太刀をつけると、距離が近いために足幅を狭くしたり、最初の3歩で調整しようとしてしまいがちです。しかし、組太刀ではそうならないように、たとえ近間で技がやりにくくても、できるだけ正しい一重身を取ります。間合いが近ければ、一撃目で斬る位置をより深くしたり、手首を押さえに行くところで、打太刀を押し込んで下がらせても問題ありません。

三本目:受流(うけながし)

受流は、敵の攻撃を受流し、同時に入身して敵を押さえ、喉元を突く勢法(型)です。

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流れは、下段の構えで左足から3歩進み、3歩目で左半身になり、打太刀の正面切りを受流し、即座に右半身に転換しつつ左袈裟で斬ります。

斬ったら即座に、左半身に転換し、左手で打太刀の手首を取り、押し込むように入身をかけて打太刀に密着し、同時に小太刀で喉元を突きます。

一人型では、受け、袈裟斬り、手首の押さえの流れを、すべて一直線の線上で一重身から一重身に転換して行います。また、左手で手首を押さえる動作は、手刀で大きく斬るような動きになります。

組太刀では、打太刀がより近間にいるため、一重身から一重身への転換は、これも斜め前方への動作になります。

四本目:捩構(もじがまえ)

捩構は、勢法一刀之太刀の捩構を、小太刀で行うものです。

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流れは、小太刀での捩構えで打太刀の攻撃を待ち構え、真横から斬ってくる打太刀の斬りを、右足を左足にそろえるように動きつつ、小太刀を正眼の形にし、受けます。

受けたら即座に左足を踏み出して左半身(一重身)になりつつ、小太刀を返して打太刀の太刀を押さえ、同時に左手で打太刀の腕を押さえます。押さえたら即座に喉元を小太刀で突きます。

捩構のポイントは、以下の点です。

  • 最初の受けで顔を突かない
    勢法一刀之太刀の捩構は、実際の動きとしては受けと同時に顔を突くのでしたが、小太刀は大刀より短いため、受けと同時に突くことができません。そのため、ここでの受けは受けのみです。ただし、肩甲骨を使って小太刀を前方に強く出して受けるという身体操作については、一刀と同じです。
  • 打太刀の切先返しに小太刀を密着させる
    受けた後に、打太刀は受けられた太刀を切先返しして、左袈裟に斬ってきます。この切先返しする太刀に、小太刀を密着させたまま押さえていくのがポイントです。密着させなければ、別の軌道に変化される可能性があるからです。

五本目:張付(はりつけ)

張付は、勢法一刀之太刀の張付と基本的には同じ動きで、敵の攻撃をかわすと同時に太刀を押さえ、喉元を突く技です。

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流れとしては、下段の構えで左足から3歩進み、3歩目と共に左の真半身(一重身)になりつつ、小太刀を斬り上げるように頭上に上げ、打太刀の正面切りをかわします。

かわしたら、即座にその場で打太刀の木剣を小太刀でおさえ、おさえたら即座に左足を踏み出しながら左手で打太刀の腕を押さえ、小太刀で喉元を突きます。

張付のポイントは、以下の点です。

  • 打太刀が動き出す前に突く
    一刀の張付は、打太刀の太刀を押さえたら、打太刀が自分の太刀をそこから引き抜こうとするため、それに合わせて喉元を突く技です。それに対して、小太刀の場合は打太刀が動くのを待っていたら、その後の突きが間に合わなくなるため、打太刀が動く前に突きます。
  • 全身で真半身になる
    最初に真半身になりつつ打太刀の斬りをかわしますが、この時全身できれいに真半身にならなければ、身体の一部が斬られてしまいます。そのため、実際に打太刀には正しい軌道で斬ってもらい、自分の身体が打太刀の斬りの軌道上に残っていないかチェックすることが大事です。

六本目:流討(ながしうち)

流討は、構造的には一刀の流討と同じです。敵の攻撃を受け→斬り→受け→斬りと連続的に攻防します。

ただし、小太刀という武器の特性上、これも一刀とは異なる動作で行います。

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流れとしては、下段に構え、左足から3歩進み、3歩目で打太刀の正面切りを受流で受けます。受けたら即座に右足を踏み出しつつ左袈裟に斬るのですが、これは打太刀から受けられます。そのため、1歩下がります。

1歩下がったところで、再び互いに向かい合う形になり、そこから打太刀が再び正面切りしてきます。それを今度は右足を踏み出し、右の受流で受け、受けた瞬間に左足を踏み出し、小太刀を返して右に袈裟斬りします。斬ったら、すぐに小太刀で喉元を突いてとどめをさします。

流討のポイントは、以下の点です。

  • 受流は瞬間的に行う
    太刀による斬撃を、片手で持った小太刀で受けきるのは難しいです。そのため、受流で斬りのすべてを受けきるのではなく、一重身から一重身への転換の途中で、瞬間的に受けるようにします。
    つまり、受流しがなくても身体には斬りが当たらないように身体を捌きます。
  • 身体の捌きで大きくかわさないようにする
    身体の捌きで斬りが当たらないようにするとは言え、それを意識しすぎると、大きく身体を捌いて斬りをかわそうとしてしまいます。
    身体を大きく捌くと、その分次の挙動が遅れます。さらに、受流それ自体の技を上達させることができません。そのため、身体の捌きは最小限にすることが大事です。

七本目:合先(あいせん)

勢法一刀小太刀の最後である七本目が合先です。

これは、敵の首を小太刀の一撃で刈る技です。

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これは、勢法一刀之太刀の合先打留と同じ構造を持っています。

勢法一刀之太刀では、本来なら3歩の間合いで行う技を、4歩の間合いで行います。これは、3歩だと打太刀を実際に斬らなければできない技法であるため、4歩離れて組太刀でも稽古できるように工夫されたものでした。

小太刀の合先も、同じ論理で4歩の間合いで行います。

流れとしては、まず小太刀を腰の上で真横(切先が右を向くように)に構え、そのまま右足から3歩進みます。

3歩進んだところで、打太刀が正面切りをしてくるため、そのまま小太刀を真横にしたまま、正面にまっすぐ突き出し、打太刀の太刀を打つようにして受けます。受けた瞬間に、小太刀を返し、打太刀の太刀を払いつつ、切先で打太刀の喉元を突きます。

合先のポイントは以下の点です。

  • 一撃目で首を刈ることを意識する
    組太刀では、4歩の間合いを取り、一撃目では打太刀の太刀に向かって斬るのですが、本来これは打太刀の太刀ではなく、敵の首を刈る動きです。そのため、組太刀でも、この一撃目にしっかり体重を乗せ、首を刈る意識を持って行うことが大事です。
    組太刀では、この一撃目の強さが十分だったかを、打太刀は太刀への当たりの強さでチェックします。
  • 一撃目と二撃目は一拍子で行う
    一撃目で刈るように斬ったあと、即座に二撃目を行うのですが、この時一撃目と二撃目は「1、2」という拍子ではなく「1」だけでできるように鍛練します。
  • より入身を深くかける
    合先は、一撃目で敵の首を刈る技ですので、十分に入身し、敵との間合いを詰めていなければ、体重を乗せて刈ることができません。さらに、組太刀では一撃目の次に、さらに間合いを進めて二撃目を打つため、そこまで想定した入身をする必要があります。
    最初は、目の前に打太刀の太刀が来るため、間合いを遠くしようとしがちですが、繰り返し鍛練することで、深く入身をかけることができるようになります。

勢法一刀小太刀から勢法二刀合口へ

二天一流玄信会の体系では、前八→抜刀術→勢法一刀之太刀→勢法一刀小太刀ときて、ようやく次の勢法二刀合口に進むことができます。

したがって、毎週稽古をしても、入会から二刀の勢法(型)が習えるまでに、早くとも数ヶ月かかることになります。

しかし、これまでもお伝えしてきたように、玄信会ではいきなり二刀を稽古せず、この順番で鍛練を繰り返した上で二刀を学ぶことで、質の高い技を身につけることができますし、二刀の技も違和感なく身につけることが可能になります。

いきなり二刀を身につけようとすれば、二刀を扱うための身体や身体操作ができていないため、質の低い技しか身につきません。そのため、二刀流がやりたいという方も、まずはしっかり前八〜小太刀の鍛練体系の中で身体創りと身体操作、技法、精神を高めて頂きます。

さて、次回はいよいよ二天一流における二刀流の勢法(型)である、勢法二刀合口の勢法(型)について詳しく解説していきます。

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