【二天一流剣術の体系③】勢法一刀之太刀で一刀を「二刀」として鍛練する

二天一流剣術の一刀の型 鍛練体系

今回までで、二天一流玄信会の鍛練体系について「前八」「抜刀術」と解説しました。

次に、ようやく正規の体系である「勢法一刀之太刀」について説明します」。

「勢法」とは二天一流における「型」のことです。勢法一刀之太刀とは、その名のとおり、一刀で行う型のことで、全部で12本あります。

この記事では、勢法一刀之太刀について画像、動画付きで解説しています。

会員の方は知識や習ったことの整理に、二天一流に興味がある方は「どのような型をしているのか」の参考までに、読んで頂ければと思います。

それでは、勢法一刀之太刀の役割から解説していきます。

勢法一刀之太刀の役割

二天一流では、大刀と小刀の2本を持って勢法(型)を行うのですが、勢法一刀之太刀は「大刀」一本のみで行う勢法(型)のことです。

二天一流では、宮本武蔵の時代は、初心者も二刀の鍛練から入っていたようですが、現在の体系では、以下の順番になっています。

前八→抜刀術→勢法一刀之太刀→勢法一刀小太刀→勢法二刀合口→勢法五法之太刀

「細川家伝統二天一流(※)」では、正規の体系は勢法一刀之太刀からになるため、最初に教わる製法(型)が勢法一刀之太刀なのです。

※細川家伝統二天一流とは、山東派二天一流9代目の宮川師範が付けた名称で、当派の正式名称です。

なぜ二刀流の流派なのに、一刀の勢法(型)からはじめるのでしょうか?

それは「前八」や「抜刀術」の記事でも解説した通り、日本刀を扱い慣れておらず武術的な身体操作が身についていない初心者が、いきなり二刀流の勢法(型)を身につけることは困難だからです。

さらに、人間は一度に意識できることが多くありません。

そのため、基本的なことから意識するようにし、それが無意識にできるようになったら次のポイントを意識するようにする、というように少しずつ意識できることを増やすことで、高度な身体操作ができるようになるのです。

それゆえ、まずは前八で身体創りと基本的な身体操作を学び、抜刀術で真剣を扱う意識や「勝負心」について意識できるようになり、それを踏まえた上で一刀に入ることで、より高度な身体操作を身につけられるようになっています。

この過程を経ることが、本格的に二刀の勢法(型)で鍛練する準備になるのです。

勢法一刀之太刀のポイント

具体的には、勢法一刀之太刀では以下のポイントを意識して鍛練します。

  • 腕力の否定
  • 木剣の重みを感じる
  • 戦う意識を持つ
  • 一刀を二刀として鍛練する
  • 組太刀と実戦を区別する

それぞれ順番に解説します。

腕力を否定する

一刀に限りませんが、二天一流における技はすべて、初心者の段階では「力」を否定して行います。つまり、刀を腕の筋力に頼って振らないように、徹底的に意識します。

そのため、実際の動きとしては、手首のスナップや肘の伸展をほとんどゼロにします。また、肩関節もできるだけ使わず、肩甲骨の動きや胸背部を柔軟に使い、振り上げ、振り下ろすように動かすことを鍛練します。

この体幹を使った刀の操作ができるようになるために、事前に前八で鍛練するわけです。

しかし、事前に前八で鍛練していたとは言え、初心者の段階ではやはりなかなか生の力に頼らず、手首・肘関節を使わずに刀を振ることは難しいです。そのため、最初は型どおりに動いても、イマイチ技が決まらない、スピードも出ない、という壁にぶつかります。

この壁にぶつかったときに、腕の力を使って振りたい、手首・肘関節を使って振りたいという誘惑に負けず、徹底的に体幹を使って振ることが大事です。

この鍛練をすることで、木剣の重みを利用した斬りができるようになります。

木剣の重みを感じる

二天一流で使う木剣は、他流と比べても、日本刀と比べても非常に軽いものです。大刀が400グラム未満、小刀は200グラムと少しくらいだと思います。

これだけ軽いため、腕の筋力を使って振ることは容易です。

逆に、腕の力を脱力し、手の内と下筋だけに力を入れて、木剣の重みを感じながら振ることは難しいです。

しかし、これが大事なポイントです。私は宮田師範から習うときに、二天一流では、

「重い刀を軽く振る、軽い刀を重く振る」

という教えが伝わっていると習いました。

「重い刀を軽く振る」というのは、もちろん腕力によってではなく、腕力を否定した身体操作を磨いて、重い刀でも軽く振れるように鍛練するということです。

そして、より大事なのが「軽い刀を重く振る」ことです。腕力に頼れば、刀の重みを殺してしまうため、軽い刀を力強く振ることはできても、重く振ることはできません。「重く振る」ためには、腕力を否定し、刀の重みを最大限に活かして振る必要があるわけです。

その鍛練のために、二天一流では、初心者でも簡単に振れてしまうような軽い木剣を使って、その軽い木剣の重みを殺さないように振る鍛練をするのです。

勢法一刀之太刀でも、すべての動作において、このポイントを意識し続けることが大事です。

戦う意識を持つ

勢法(型)では、すべて組太刀、つまり二人一組で、実際に木剣で打ち合う形で稽古を行います。

そのため、技を正しい形で鍛練するというだけでなく、本当に戦っているのだという意識を持って行うことが大事です。

たとえば、本来なら打太刀(技を仕掛ける方)は、仕太刀(技を行う方)が正確に技を鍛練できるように、攻撃の動作が決まっています。一刀の場合は、ほとんどは八相からの正面切りです。

しかし、仕太刀がある程度技ができるようになったら、打太刀は仕太刀に隙があれば、本来の動作にはない攻撃をしても良いのです。また、仕太刀はそうさせないように型を行わなければなりませんし、もし型にない攻撃をされたら、自分も動きを変化させて対応しても良いのです。

逆に、打太刀の攻撃に隙があれば、仕太刀は型どおりの動き方にこだわらず、技を変化させて攻撃しても良いです。

このようなやり方を取る理由は、技の動作だけでなく「拍子」「間合い」も勢法(型)を通して技にしてく必要があるからです。お互いに「隙があれば攻撃する」という意識を持って行うことで、より緊張感を持って「拍子」「間合い」を鍛練することができます。

そして、互いに隙を見せずに緊張感を持って勢法(型)を行うことで、元の動きの通りに勢法(型)を行っても、隙が出ないようになります。

一刀を二刀として鍛練する

二天一流の勢法(型)は、抜刀術から一刀、小太刀まですべて二刀流の鍛練として行うようになっています。

そのため、勢法一刀之太刀も一刀ではなく二刀を持っていると強く意識して鍛練します。ここでの「意識する」とはなんとなく二刀を持っているイメージを持つことではありません。

たとえば、一刀の正面切りは通常の振り方では、どちらかの手の力が強くなる(剣道経験者は左手が、まったくの初心者は利き手が強くなる傾向があります)振り方になります。一刀を二刀として扱うということは、両手とも同じ力で振らなければなりません。また、二刀を振るときと同じように体幹を使って振ることも大事です。

また、一刀之太刀の勢法(型)の中には、二刀の勢法(型)と同じ構造があるものもあります。

後ほど詳しく解説しますが、一刀の4、5本目の「受流→正面切り」の動作は、勢法二刀合口6、7本目の「二刀での受流→敵の太刀を二刀で押さえる」という動作と、構造的に同じです。

また、一刀10本目の「受け→ねばりをかけて払う→払った勢いで突き」という動作は、勢法二刀合口9本目の「二刀での十字受け→ねばりをかけて払う→払った勢いで切先返しし、斬る」という動作と、構造的に同じです。

これらの技は見た目からも分かりやすい共通点があるのですが、実際には一刀の勢法(型)はすべて二刀の勢法(型)と繋がっていて、一刀の勢法(型)は二刀の鍛練のためにあるという意識を持ち続けることが大事です。

組太刀と実戦を区別する

勢法一刀之太刀では、組太刀と実戦における技法を区別しておく必要があります。

組太刀はあくまで稽古ですので、打太刀に怪我させてはいけません。そのため、本当に木剣で刺したり、打ったりすることはできません。

したがって、実際の実戦における技法と、組太刀で行う動作とは、以下のように異なる点があります。

  • 一本目:組太刀では、体を左に捌きながら突くが、実際には真っ正面に突く
  • 二本目、三本目:組太刀では、左右に捌きながら袈裟斬りするが、実際には真っ正面から袈裟斬りする
  • 四、五本目:組太刀では、受流の時に左右に身体を若干捌きながら受けるが、実際には真っ正面から受ける
  • 六本目:正眼の形で受けるときに、組太刀では打太刀の横に切先をよけるが、実際には正面から受けながら顔を突く
  • 七本目:組太刀では、切先を斬り上げるようにしつつ体捌きして斬りをかわすが、実際には逆回転の切先返しする
  • 八本目:受流の時に若干左右に身体を捌きながら受けるが、実際には真っ正面から受ける
  • 十一本目:組太刀では4歩の間合いで、敵から離れて正面切りするが、実際には3歩の間合いで斬り込む

【動画】勢法一刀之太刀の解説

それではこれから、勢法一刀之太刀の具体的な技の内容を解説していきます。

なお、動画の中では一人で型をしていますが、実際には二人一組の組太刀で打ち合いながら行います。

技の流れは非常にシンプルですが、それだけに二刀に繋がるように鍛練することに集中して取り組むことができます。

一本目:指先(さっせん)

指先は、敵の頸動脈を刀の切っ先でひと突きにする技です。

二天一流剣術の型「指先」

具体的な流れとしては、右足から3歩踏みだし、3歩目と同時に右手に持った大刀で、片手で敵の首をひと突きにします。刃の向きは正面から見ると斜めになり、手首は伸ばさず、縮めず、死に手にならないようにします。

突きであるため、肘の伸展を使って突きたくなるのですが、これも疑似の進展は極力使わず、肩甲骨の動きと体全体の前身によって突くようにします。

組太刀で行う場合は、打太刀が正面から斬ってくるため、3歩目で体を右に捌いて正面切りをかわしつつ、同時に打太刀の首のギリギリ横を突きます。

指先のポイントは、1歩目から生み出した前進力をそのまま勢いよく突きに乗せることです。

組太刀だと相手がいるため、つい勢いを弱めてしまいがちですが、たとえ打太刀がいても勢いを止めず、前進力を乗せた突きを行うことが大事です。

【兵法二天一流玄信会】勢法一刀之太刀1〜5本目

二本目:八相・左(はっそう左)

八相・左は、向かってくる敵を袈裟斬りにする技です。

二天一流剣術の型「八相・左」

具体的には、八相(木剣を握る拳が右耳の位置に来て、木剣が斜め45度の上向きになる構え)のまま右足から3歩進み、3歩目と同時に左袈裟に斬ります。左袈裟というのは、敵の左側の肩口から斬ることです。

組太刀の場合は、打太刀が正面から斬ってくるため、3歩目でそれを向かって右側にかわすと同時に袈裟に斬り、打太刀の体に木剣が当たる寸前で寸止めします。

これも、一本目と同じく、打太刀がいても1歩目からの勢いを緩めずに行うことがポイントです。

三本目:八相・右(はっそう右)

八相・右は、八相・左と逆の動きです。

二天一流剣術の型「八相・右」

八相に構えたまま、左足から3歩踏みだし、3歩目と同時に右袈裟に斬ります。

組太刀の場合は、打太刀が正面から斬ってくるのに対し、向かって左側にかわすと同時に袈裟に斬り、打太刀の体に木剣が当たる寸前で寸止めします。

この八相左、右のポイントは、どちらから斬ってくるのかを相手に悟らせないことです。

初心者の場合、八相・左の時は2歩目当たりから左側に重心が寄り、3歩目で左に体を捌いて左袈裟に斬ることが丸わかりになりがちです。そのため、技の寸前まで重心は中心線から左右にぶらさないようにし、3歩目の瞬間に身体を捌くように鍛練します。

四本目:受流・左(うけながし左)

受流・左は、敵が正面から斬ってくるのを「受流」で受け、敵が下がったところをすぐに返す刀で正面から斬る技です。

二天一流剣術の型「受流・左」二天一流剣術の型「受流・左」2

流れは、左足から3歩進み、3歩目と同時に「受流」で受け、すぐに右足で4歩目を踏み出すと同時に正面切りします。

組太刀としては、3歩目で実際に打太刀が斬ってくる太刀を受け、打太刀は受け流されたらすぐに下がって2撃目を加えようと構えるため、打太刀が下がると同時に間合いを詰めて正面切りします。

受流・左のポイントは、以下の2点です。

  1. できるだけ太刀をかわさない
    「受流」は打太刀の太刀が強ければ、体を捌いて打太刀の太刀をかわすようにしながら行うことも可能です。たとえば、受流・左の場合は、向かって左に3歩目を踏み込むことで、打太刀の太刀をかわしつつ受けることもできます。
    しかし、このように身体を捌くと「受流」という技自体が上達しません。
    重要なのは「受流」の質を上げることですので、稽古では打太刀にの正面に向かって深く入身(半身で踏み込み、間合いを詰めること)しつつ、太刀を体でかわさず、真っ正面から受流することが大事です。
  2. 受けた後に間合いをあけない
    受流をした後、打太刀は2撃目のために1歩下がって構え直します。この時、打太刀、仕太刀は互いに「本当に戦う」意識を持たなければならないため、もし仕太刀に隙があれば、本当に2撃目を攻撃しても良いです。
    そうさせないために、仕太刀は打太刀が下がる拍子を察知し、それに合わせて間合いをあけないように前進し、攻撃させないことが大事です。もしくは、相手が下がるのが遅ければ、下がるのを待たずにその場で正面切りしても良いです。
    ※ただし、これは応用的な稽古であるため、初心者の段階では、まずは正しい手順で行います。

五本目:受流・右(うけながし右)

受流・右は、受流・左と逆の動作になります。

二天一流剣術の型「受流・右」二天一流剣術の型「受流・右」2

右足から3歩進み、3歩目と同時に受流、受け流したら直後に左足を踏み込み、同時に正面切りです。

注意点は受流・左と同様です。

六本目:捩構(もじがまえ)

「捩構」とは、この勢法(型)の最初の構えのことです(動画参照)。

この構えは、正眼の構えから左足が前の半身になると、自然になる構えです。正しい半身は、両肩を結んだラインと骨盤の両端を結んだラインが一致し、体幹が一枚の板のようにねじれがない状態です。そのため、上体で正眼に構えたまま正しい半身の姿勢になると、自然と捩構の形を取ることができます。

この時、切先は正面にいる打太刀の右目を刺すような意識を持ちます(「おもてを刺す」という教えです)。

捩構の勢法(型)は、この「捩構」で構え、敵の攻撃を迎え撃つ勢法(型)です。二天一流剣術の型「捩構」1二天一流剣術の型「捩構」5二天一流剣術の型「捩構」3二天一流剣術の型「捩構」4

流れは、打太刀が横向きに胴を斬ってくるのに対し、捩構から右斜め前に踏み出しつつ、両足を揃え、正眼の構えの形で、打太刀の太刀を受けます。打太刀はすかさず下がり2撃目を同じ軌道で斬ってっくるため、こちらは身体を横に向けつつ前進し、大きく身体を上に伸ばすように上段に構え(「たけくらべ」の教えです)、すかさず打太刀の2撃目を打ち落とします。打太刀はさらに下がって3撃目を加えようと構えるため、すかさず間合いを詰めて正面切りします。

【兵法二天一流玄信会】勢法一刀之太刀6〜9本目

捩構のポイントは、以下の点です。

  1. 実際には一撃目で敵の顔を刺す
    打太刀の1撃目に対し正眼で受ける技は、組太刀では切先を打太刀の身体からそらして行います。しかし、実際には、正眼で1撃目を受けるのと同時に切先で敵の顔を刺します。そのため、組太刀でも敵の顔のできるだけ近くを切先で刺すように意識します。
  2. 受けるときは胸背部を使う
    上記と同じ正眼での受けの時に、肘関節の伸展や腕の筋力を使わず、肩甲骨を前にせり出す動きで受けます。つまり、これも腕力を否定し、胸背部を使うのです。
  3. 打ち落とすときに重心をフルに使う
    打太刀の2撃目を打ち落とす動きは「たけくらべ」で上に伸び上がり、そこから打ち落とす動きになります。このとき、自分の重心を真下に落とし、全体重を自分の太刀に乗せるような身体操作を行います。
  4. 間合いを詰める
    2撃目の後、打太刀は後ろに下がりますが、この時、打太刀に間合いをあけさないことが大事です。そのため、打太刀が下がろうとする拍子を察知し、即座に前進して間合いを詰めます。間合いを詰めることで、相手は攻撃できなくなります。

七本目:張付(はりつけ)

張付は、敵の正面切りを体を捌いてかわし、即座に敵の太刀を押さえ、敵が下がったところを切先でひと突きにする勢法(技)です。

二天一流剣術の型「張付」1 二天一流剣術の型「張付」2 二天一流剣術の型「張付」3

流れは、左足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを左にかわします。この時、左の真半身になりつつ、木剣を自分の頭上に構えます。かわすと同時に、頭上に構えた木剣を下ろし、木剣と自分の太ももとで打太刀の太刀を挟んで押さえます。

打太刀は攻撃不能になるため、下がりつつ太刀を引き抜こうとしますので、下がった瞬間に間合いを詰めて切先で打太刀の首元を刺します。組太刀の場合は、首元で寸止めします。

張付のポイントは以下の点です。

  1. 切先返しの変化技として行う
    張付は、敵の方が若干動きが速く、自分が先に攻撃できないために、体を捌いて攻撃をかわす動きです。そのため、自分の方が先に攻撃ができる拍子であれば、同じ動きから逆回転の切先返しをして、斬り上げる、もしくは返す刀で正面切りすることができます。稽古では、正しい動作で行う必要がありますが「拍子によっては切先返しで先に攻撃する」という動きを内包しているものとして、稽古することが大事です。
  2. 真半身でかわす
    この技は、最初に敵の攻撃をかわすときに、真半身でかわすことがポイントです。この時の間半身では、敵の太刀の軌道に身体が残らないように、身体のすべてが真半身になっていることが大事です。

八本目:流討(ながしうち)

流討は、敵の攻撃を受流し、即座に敵に正面切りしたところを敵に受け流され、さらに敵が正面切りしてくるため、それを受流し、2撃目の正面切りで倒す技です。

二天一流剣術の型「流討」1 二天一流剣術の型「流討」2 二天一流剣術の型「流討」3 二天一流剣術の型「流討」4

流れは、左足から3歩進み、打太刀の正面切りに対し3歩目と同時に左の受流で受けます。受け流すと同時に、即座にその場で正面切りで打太刀を斬りますが、これを打太刀は受流し、即座に正面切りしてきます。そのため、仕太刀は足をその場で入れ替えると同時に、右の受流をし、即座に正面切りします。

流討のポイントは以下の点です。

  1. 体をできるだけ捌かない(斬りを体でかわさない)
    流討も「受流」と同じく、体で打太刀の斬りをかわさないようにします。体でかわすと「受流」の技の質がレベルアップしないためです。そのため、打太刀に対して真っ正面から入り身し、受流します。
  2. 間合いをあけない
    「受流」で受けるときは、できるだけ打太刀に深く入り身します。さらに、2度目の受流をするときは打太刀に対して間合いをあけたくなりますが、ここでも間合いをあけず、打太刀が動きづらいように間合いを詰めます。勢法(型)はすべて、このように相手ができるだけ動きにくいように、嫌がるように動きます。
  3. 受けから斬りの間をあけない
    初心者の段階では、受け、斬り、受け、斬りと1、2、1、2と一つずつ正確に行うことが大事です。しかし、正確に動けるようになったら、受けから斬りへ、斬りから受けへの間に間をあけないようにしていきます。

九本目:虎振(とらぶり)

虎振は「脇構え」で構えた状態で敵の攻撃を待ち受け、敵が斬ってくる瞬間に飛び違いながら身体を入れ替えてかわし、左袈裟に斬る技です。

二天一流剣術の型「虎振」1 二天一流剣術の型「虎振」2

脇構えとは、左足が前の左半身で、刀が前から見えないように自分の身体に隠す構えのことです(動画参照)。

虎振は、このように木剣を後ろに構えたところから斬る動きであるため「後振り」から言葉が変わって「後振り→ごふり→こぶり→虎振(とらぶり)」となったという由来があります。

虎振の流れは、その場で右足を引いて左半身の脇構えになったところから、打太刀が斬ってくるのを待ち構えます。そして正面切りしてくる瞬間に、飛び違いながら身体を入れ替え、右半身になりつつ、左袈裟に斬ります。組太刀の場合、打太刀の肩口で寸止めします。

この飛び違いからの袈裟斬りは、抜刀術三本目の2撃目と同じ動きです。

虎振のポイントは、以下の点です。

  1. ジャンプせずに身体を入れ替える
    抜刀術三本目と同じですが、身体を入れ替える動作では飛び上がる(ジャンプする)のではなく「沈身」によって身体を浮かせ、足を入れ替えることで身体を転換するということです。
  2. 木剣の重みを利用して斬る
    虎振の斬りでは、身体の入れ替えと木剣の重みによって斬ります。飛び違いで身体を入れ替えると、つい木剣の重みを殺してしまいがちです。しかし、ここでも木剣の重みを殺さず、しっかり重さを感じつつ、木剣の重みで袈裟斬りするよう意識します。

十本目:数喜(かずき)

数喜では、敵の斬りを正面から受けて、それを払って、その払う勢いを使って首を突く技です。

二天一流剣術の型「張受」1 二天一流剣術の型「張受」2 二天一流剣術の型「張受」3

流れとしては、左から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを、斬りに対して木剣を真横にして受けます。受けた瞬間に、木剣に「ねばりをかけ」て、打太刀の太刀を打太刀の身体の後方・横に払い、その払った勢いを活かして跳ね返るような動きで、切先で打太刀の首を突きます。

【兵法二天一流玄信会】勢法一刀之太刀10〜12本目

数喜のポイントは以下の点です。

  1. 受けた瞬間に突く
    数喜は、受けた瞬間の「がっき」という音が、そのまま技名に転化したと言われています。そのため、勢法(型)としては受けると同時に払い、突くようにするのです。とは言え、最初は後述する2、3の点を意識することが難しいです。そのため「受けると同時に突く」という一瞬で意識し、できるようになることは難しいです。したがって、最初は、まずは受けて、次に入り身をして払い、突く、というようにそれぞれの段階を丁寧に鍛練します。
  2. ねばりをかける
    「ねばりをかける」とは『五輪書』にも登場する技法です。日本刀は反りがあるため、本来なら受けた瞬間に、互いの太刀の接触点は簡単に滑り、ずれてしまいます。これに対し「ねばりをかける」とは、互いの太刀の接触点から滑らせず、くっつける技法です。くっつけることで相手をコントロールし、次の入り身に繋げます。
    相手の動きに合わせるのではなく、こちらの身体操作によって太刀をくっつけます。最初は難しいですが、鍛練を積むことでできるようになります。
  3. 入り身によって払う
    ねばりをかけると同時に、左半身のまま入身し、その入身の力を使いつつ相手の後方に太刀を払います。両手で受ける形になるため、両手の動きや腕力によって払いたくなりますが、これを否定し、あくまで入身の力で払います。

十一本目:合先打留(あいせんうちどめ)

合先打留は、仕太刀と打太刀が同時に斬りかかり、正中線を取り合い、2撃目の正面切りで倒す技です。

二天一流剣術の型「合先打留」1 二天一流剣術の型「合先打留」2 二天一流剣術の型「合先打留」3

流れは、4歩の間合いまで離れ(他の勢法(型)は3歩の間合いです)、八相に構え、右足から3歩進み、3歩目で正面切りします。打太刀も同様の動きをするため、互いに正眼の構えに近い形で、太刀が交差する形になります。

そこから、さらに打太刀の顔に向かって突くようにし、打太刀がのけぞりながら後退するため、2歩進んで正面切りします。

合先打留のポイントは以下の点です。

  1. 「一つの太刀」と同じ構造
    合先打留は、有名な塚原卜伝の「一つの太刀」と同じ構造が隠されているものです。組太刀では、この型だけ4歩の間合いまで離れるのですが、実際には3歩の間合いの技です。
    この技を3歩の間合いで行うと、3歩目で正面切りしたときに互いの太刀が交差し、正中線を取れた方の太刀が敵を斬り、正中線を取れなかった方の太刀は、外れてしまいます。相打ちにはなりません(ただし、袋竹刀など柔らかいもので行うと相打ちになります)。
  2. 正中線を取り合う
    上記のような技が隠されているため、4歩の間合いの組太刀で行う時も、互いに確実に正中線を取れるように技を行います。正中線を取った方の切先は敵の顔に来て、取れなかった方の切先は、顔から外れます。
    そのため、勢法(型)の正しい動きとしては、仕太刀が正中線を取れなければなりませんが、実際の組太刀では、打太刀の方が正中線を取ってしまうこともあります。

十二本目:躱打(あましうち)

躱打は、敵の斬りを一重身でかわし「たけくらべ」の教えの通り伸び上がり、上段から正面切りします。

「たけくらべ」とは、以下のようなものです。

「丈比べ」という事

敵の身際に入り込む時、我が身を縮めないようにして、足をも伸ばし・腰をも伸ばし・首さえも伸ばして強く入り込み、敵の顔と顔を並べ合い、身の丈を比べて「比べ勝つ」と思うほどに丈を高くして、強く入身することが肝心である。

『新編真訳五輪書』p.161

実際の勢法(型)の中の動作としては、文字通り全身で伸び上がり、上段に構え、相手を圧倒するような姿勢です。

二天一流剣術の型「躱打」1 二天一流剣術の型「躱打」2 二天一流剣術の型「躱打」3

流れは、八相に構え、右足から3歩進み、3歩目で打太刀が正面切りで斬りかかってくるため、3歩目を前方・右に踏み込み、真半身になりつつ両足を揃え、伸び上がります。同時に、八相から左手を大きく回しつつ、上段の構えになります。

打太刀の正面切りをかわすことで、打太刀は2撃目のために下がって構え直すため、上段から踏み込み、全重心を木剣にかけて正面切りします。

躱打のポイントは、以下の点です。

  1. 全身で真半身になる
    3歩目と同時に敵の太刀をかわしますが、この時同時に左手を大きく回転させて、上段で太刀を持ち直します。この動作が不十分だと、敵の太刀の軌道上に手が残り、斬られてしまいます。
    そのため、全身で真半身になる意識が重要で、左手の動きが全身で真半身になれているかどうかのバロメーターになります。
  2. 「たけくらべ」で敵を威圧する
    たけくらべは、入身をする時に、つい間合いに深く入り込むために心身共に萎縮してしまいがちであるため、そうならないようにするための教えです。そのため、体だけでなく心も強く持ち、敵を威圧するような心持ちで行うことが大事です。

勢法(型)における足捌きについて

一刀に限りませんが、二天一流玄信会の勢法(型)では、すべて1歩目、2歩目、3歩目で異なる歩みをします。

1歩目は通常通りの歩みの意識・動き、2歩目は敵に懸かりに行くための意識・動き、3歩目は実際に斬りかかるための踏み込みです。

間合いが6歩なら、4歩目までが通常の歩み足で、5歩目が懸かり足、6歩目が斬りのための踏み込みです。

ちなみに『五輪書』では、歩みについて以下のように書かれています。

足遣いの事

足の運びようは、爪先を少し浮かして、踵でもって強く踏むことである。足遣いは、場合によって大股に小股に、遅く歩いたり速く歩いたりすることはあるが、常に歩むがごとくである。

『新編真訳五輪書』p.118

「常の歩むがごとく」とあることを額面通りに受けとると、二天一流の型を行う上では、すべて普段通りの歩みで行わないと行けない、と考えがちです。

しかし『五輪書』に書かれている歩みや、宮本武蔵が至った境地から書かれたものです。

これの通りに、私たち現代人が日常通りの歩みで技を行ったところで、何の鍛練にもなりません。そのような考えから、勢法(型)の鍛練では、1歩目、2歩目、3歩目と意識・動きを区別して行うのです。

同じ考えから「爪先を少し浮かして、踵でもって強く踏む」についても、私たちが単に真似しても何の鍛練にもなりません。

そのため、二天一流玄信会では、歩みについても工夫して行っています。

勢法(型)の後の動作

勢法一刀之太刀では、それぞれの勢法の前後にも決まった動作があります。

それぞれ技を決めた後も、戦いの中にいる意識を弱めてはいけません。技の後に、正眼に構えつつ数歩打太刀を追い詰めて下がらせ、それから元の位置まで後ろ向きに下がります。

この追い詰め、下がる動作の時、互いに正眼に構えるのですが、互いの正眼の構えの距離が離れず、くっつかない絶妙な間合いを保つようにします。これは、間合いの鍛練のためです。

この動作は、初心者の段階では、互いに正眼の構えで切先の数センチを交差させる形でキープし、その位置関係をずらさずに前後に動くようにします。それがある程度できるようになったら、正眼の構えで互いに切先を数センチ離し、その間合いからずらさないように前後に動きます。

これを毎回の勢法(型)の後に繰り返すことで、自然に間合いを鍛練できるのです。

以上が勢法一刀之太刀の解説でした。

次回は、勢法二刀合口について解説します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました