二天一流の抜刀術

鍛練体系

【二天一流剣術の体系②】抜刀術で日本刀を扱う意識と「勝負心」を養う

二天一流玄信会では、

前八→抜刀術→勢法一刀之太刀→勢法一刀小太刀→勢法二刀合口→勢法五法之太刀

という順番で鍛練を進めていきます。

基本的な身体・身体操作の鍛練法である前八と、47本の勢法(型)で構成されています。

今回は、前八の次に行う「抜刀術」について詳しく解説します。

二天一流における抜刀術の役割と歴史

抜刀術とは「居合」とも言われる技法で、二天一流以外にも様々な流派に存在します。刀を鞘の中に収めた状態から、不意に襲ってくる敵に対して抜刀し、攻撃する技法のことです。

二天一流の抜刀術の歴史

二天一流における抜刀術は、もともと昔からある体系ではありませんでした。しかし、これから紹介する「剣術の鍛錬における矛盾の克服」のために、私たちの師範である、第11代目宮田和宏師範が体系に組み入れたものです。

とはいえ、まったくゼロから創り出したものではなく、9代目宮川伊三郎規心師範が制定した「木剣術操法」という木剣を使った鍛錬法がもとになっています。歴史をたどると、山東派二天一流の修業者たちは関口流抜刀術を並行して修業する伝統があったようで、その関口流の利点から9代目宮川師範が創り出したのが木剣術操法です。

その木剣術操法をもとに、それを真剣(もしくは居合刀)を用いて行うように創り変えたのが抜刀術なのです。

二天一流における抜刀術の役割

二天一流剣術は、二刀を主体とした剣術です。

そのため、前八から抜刀術、一刀、小太刀のすべてが「二刀流」を身につけるための鍛錬体系になっています。抜刀術や一刀、小太刀の勢法(型)があるのは、現代人である私たちがいきなり二刀流の勢法を身につけるのは困難であるため、まずは二刀を持たずに基本的な身体の動かし方を身につけるためです。

抜刀術の場合は、

  1. 技を途中で止めず、最後まで斬り下ろす形で技にするため
  2. 触れれば切れる「真剣」を使う意識を身につけるため
  3. 真剣勝負を戦う「勝負心」を身につけるため

という意義があります。それぞれ簡単に解説します。

①技を途中で止めず、最後まで斬り下ろす形で技にするため

二天一流の勢法(型)は、基本的に組太刀(くみだち)で鍛練します。

組太刀というのは、技を行う側「仕太刀」と攻撃する側「打太刀」に分かれて、木剣で技を打ち合う勢法(型)の鍛練方法のことです。稽古時は、たいてい組太刀として勢法(型)の鍛練をします。

この組太刀は、実際に打ち合うため「拍子」「間合い」の鍛練にもなり、自分の技がしっかり相手に効いているかが分かる利点があるのですが、一方であくまで稽古であるため、相手に本気で打ち込み、一刀両断することができない(木剣なので当然ですね)という欠点があります。

したがって、組太刀では「留め太刀」をします。留め太刀というのは、木剣と木剣が打ち合った瞬間に太刀を止めることです。寸止めではなく当たってから止めます。

技は、繰り返し鍛練した形で技になります。そのため「留め太刀」での鍛練を繰り返すと、本来なら斬り下ろす動きなのに「当たったところで斬りの動きを止める」という形で技になってしまいます。

「勝負の時だけ最後まで斬り下ろせば良いのでは?」

と思われるかもしれませんが、技は極限の緊張状態でも無意識にできるまで繰り返して身につけるものです。

そのため「稽古ではAの動きで、真剣勝負ではBの動き」

というように使い分けることは困難なのです。

前置きが長くなりましたが、抜刀術にはこの「剣術の稽古における矛盾」を克服する役割があります。抜刀術は一人で行う型であるため、目の前の敵(仮想敵)をしっかり最後まで斬り下ろす形で技を覚えることができます。

抜刀術を繰り返すことで、正しい斬りの動きを身につけることができるということです。

逆に、抜刀術では相手との「拍子」「間合い」を鍛練しづらいという欠点があるため、逆に組太刀の稽古によってその欠点を補います。このように、二天一流剣術の体系は、すべて「剣術の稽古における矛盾」を克服し合う体系になっています。

②触れれば切れる「真剣」を使う意識を身につけるため

抜刀術は真剣の日本刀を使って稽古を行います。

一方で、二天一流剣術における他の体系は、すべて木剣で鍛練します。しかし、現代人は、もちろん日常的に真剣に触れることはありませんので、真剣が「触れれば斬れる」非常に危険な刃物だという意識が、実感としてありません。

そのため、抜刀術には、この「触れれば斬れる」という真剣の意識を創るという役割もあります。

※真剣は高額ですし、初心者には危険でもあるため、居合刀(模擬刀)を使う人も多いですが、居合刀も真剣だと思って稽古をします。

「真剣の意識がなぜ必要なの?」

と思われるかもしれませんが、実はこれはとても大切なことです。

その理由は、技は「防具や畳によって創られる」からです。

この「防具・畳」の問題は、南郷継正先生の著書の中で紹介されているものですが、簡単に言うと、近代武道で使われる防具や畳といった安全に稽古するための道具によって、技が本来の形から変わってしまうということです。

「防具・畳」の問題とは、たとえば剣道では、防具や竹刀を使って稽古をするため「すばやく当てて引くような打ち」「軽い竹刀だからこそできる振り」といった、剣術にはなかった動きが生まれていることです。防具や竹刀に技が創られているため、いざ真剣を持って戦うとなると、とても使えない動きにしかならないのです。
※もちろん剣道を競技として行う分には、まったく問題になりません。

この「防具・畳」の問題は、二天一流剣術においては「木剣の問題」とになります。

勢法一刀之太刀、勢法一刀小太刀、勢法二刀合口、勢法五法之太刀といった勢法(型)は、すべて木剣で鍛練するため、つい自分の使う得物が「真剣」ではなく「木剣」だと、無意識に思うようになってしまうのです。

勢法(型)で、自分の持っている武器が「木剣」だと思ってしまうと、

  • 真剣ではあり得ないような技・動きをしてしまう
  • 技の質が落ちてしまう
  • 真剣に比べて緊張度が落ち、不動心が創られない

といった問題の原因になります。

こういった問題を克服するために、まずは抜刀術で「真剣の意識」を創り、その意識を持ったまま次の勢法(型)の鍛練に進んでいくことが大事なのです。

③真剣勝負を戦う「勝負心」を身につけるため

「勝負心」というのは、命をかけて敵と真剣勝負をする強い心のことです。

勢法一刀之太刀以降の組太刀での稽古では、打太刀はできる限り強く打ち込み、仕太刀はそれに対応して、打太刀を倒す意識で技を行います。

しかし、木剣とは言え本気で打ち込み、本気で技をしようとすれば、大けがをしてしまいます。これでは、本当に命をかけて戦っているんだという「勝負心」が身につきません。

一方で、抜刀術は一人で行う型なので、本気で刀を振り、本気で技を行うことができます。そのため、抜刀術では、組太刀よりも「勝負心」を養成しやすいという利点があるのです。

二天一流における抜刀術の技の解説

それでは、これから具体的な抜刀術の技の解説をします。

抜刀術には10本の型がありますので、これからそれぞれの技の動きとポイントを解説します。二天一流に興味のある方は、参考までに読んでみてください。

【一本目】懸之先

懸之先は、前八・基本練技の「縦抜打ち」を使った抜刀術です。

前八について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系①】前八(まえやつ)で身体操作・身体創りをする

まず、右足から歩みだし、5歩目で縦に抜刀し、前進する力を使って敵の喉元まで斬り下ろします。これが一撃目です。次に、左・右と2歩踏み込みながら逆回転の切先返しをし、右足を踏み込むと同時に正面斬りです。これが二撃目です。

斬り下ろしたら上段の構で残心し、正眼に構え、1歩足を引いて血振るいし、納刀します。

「懸之先」という名前は、二天一流において重要な概念から使われています。

二天一流には「3つの先」という考え方があります。

  • 懸之先:自分から相手に攻撃しにいくこと
  • 待之先:相手から自分に攻撃をしかけてくること
  • 躰々之先:お互い同時に攻撃をしかけること

これを見て分かるように、抜刀術の一本目は、自分から相手に向かって攻撃をしかけていく技として、二天一流の上記の概念から名前が付けられています。

したがって、技を行う中でも、向かってくる仮想敵に対して「自分から攻めかかる」という意識を強く持つことが大事なポイントです。

【二本目】待之先

待之先は、前八・基本練技の横抜打ちを使う技です。

これも右足から歩み出し、5歩目で横に抜刀。敵の胴を右から左に両断します。これが一撃目です。次に、前進しながら逆回転の切先返しをし、左袈裟に斬り下ろします。これが二撃目です。

斬ったら下段で残心し、1歩下がって血振るい、納刀です。

抜刀術二本目には「待之先」という名前が付けられています。これは、先ほど説明したように、相手から攻撃をしかけてくるのに対して、対応する技です。

具体的には、相手が斬りかかってくる動きを察知し、こちらも前進し、相手が正面から斬りかかってくるところで、横に抜き打ち、相手の胴を両断するという動きです。抜刀術では、技を覚えた後に「鞘付き木刀(鞘が付いた木刀のことです)」を使って、抜刀術の動きの想定(理合)を、打太刀を付けて稽古します。

この場合、打太刀は一本目・懸之先をしかけ、それに対して仕太刀は待之先で対応する、という稽古をします。

打太刀は自分から攻撃をしかけ(懸之先)、仕太刀はそれに対応する(待之先)ことで、それぞれがそれぞれの型における「先」を鍛練できるようになっています。

【三本目】躰々之先

躰々之先は、互いに同時に攻撃をしかけてしまった場合の状況における技法のことです。

技としては、二本目と同様に「横抜打ち」の変化技になります。

これも右足から歩み出し、5歩目で横抜打ちに抜刀するのですが、ここで変化させて敵の首を真横に斬ります。ただし、型の想定では、この首元への斬りの直前で相手が気付き、動きを止めます。したがって、この首元への斬りは、首元に刀を突き立てることによるけん制になります。これが一撃目です。

この一撃目で相手が八相(自分の耳の位置まで刀を振り上げた形です)で動きを止めるため、すかさず1歩引いて脇構え(刀を自分の身に隠す構えです)になります。そこで、相手が八相から再び正面に斬りかかってくるため、飛び違いながら斬りをかわし、同時に袈裟に斬ります。これが二撃目です。

斬ったら下段に残心し、正眼に構え、1歩引いて血振るいです。

この三本目の型は、互いに同時に攻撃をしかけることで、横抜打ちを途中で変化させるというところにポイントがあります。

抜刀術の型では、もちろん決まった動きをまずは覚えなければならないのですが「同時に攻撃をしかけてしまったため、途中で動きを変化させて対応する」という意識をもって鍛練するのがポイントになります。

また、二撃目の飛び違いながらの袈裟斬りは、最初は難しいものです。

私が宮田師範から教わった時は、この飛び違いはジャンプではなく、沈身によって身体を浮かせ、同時に足を入れ替えることで身体を転換させるという動きだと習いました。

非常に高度な身体操作ですが、身につけると相手に悟られず、一瞬で身体を入れ替えて斬ることができます。

【四本目】一重身

一重身とは、二天一流剣術において最も重要な身体操作の一つです。

一重身とは、敵に身体の正面側を向けず、身体の正面を真横に向け、敵には肩などの身体の側面しか見えない姿勢のことです。右肩が前に出る右半身の一重身と、左肩が前に出る左半身の一重身があります。

二天一流では、基本的に右半身の一重身から左半身の一重身へ、またその逆へ、という動きで前進・転換しながら技を行う特徴があります。

このような一重身という姿勢を大事にするのは、二天一流が片手に一刀ずつ持つ二刀流だからです。

片手で重い日本刀を振るためには、身体の動きと一致させなければなりません。それができなければ、腕の筋力を使った斬りになり、遅く、弱い斬りにしかならないためです。

「腕力が強ければ、片手でも強く斬れるのでは?」

と思われるかもしれませんが、それでは同等の腕力を持ち、両手で一刀を持つ相手と戦う場合に、力負けしてしまいます。

二天一流の勢法(型)では、すべてを通して一重身の意識が重要なのですが、その一重身の感覚を特に重視して鍛練するのが、抜刀術四本目の「一重身」です。

一重身は、左足から歩み出し、5歩目で下抜打ちをします。これが一撃目です。次に、頭上で刀を180度反転させ、重力に従って真下に刀を落とし、その力と身体の前進する力を使って、前進しつつ真下から真上に斬り上げます。これが二撃目です。

その後、上段で残心し、正眼に構え、1歩引いて血振るいします。

想定(理合)としては、斬りかかってくる敵の小手を一撃目で斬り上げ、下がった敵に対して前進しながら真下から一刀両断にする、という動きです。

この一撃目から二撃目への動きは、まさに「一重身から一重身への転換」ですので、一重身の鍛練ができます。

特に二撃目の「前進しながらの真下から真上への斬り上げ」は、傍目に見てもそこまで難しさが分かりませんが、実際にやってみるととても難しい動きです。一重身から一重身への転換がなければ、斜めに斬り上げてしまうのです。

技の動きが一重身ができているか、のバロメーターにもなります。

【五本目】切先返

切先返しとは、二天一流における重要な技法の一つです。

敵に向かって突き上げるように斬り上げ、途中で軌道を回転させ、斬り下ろすという技法のことで、斬り上げる途中で軌道が変わる逆回転の切先返しと、同じ軌道上で回転させる順回転の切先返しの二つがあります。

片手で日本刀を扱う二天一流にとって、回転力を使って強い斬撃力を生み出すために必須の技法です。

五本目の「切先返」は、この切先返しの技法を使った抜刀術です。

右足から歩み出し、5歩目を踏み込むのと同時に、下方から斜めに斬り上げ、順回転の切先返しをしてそのまま左袈裟に斬り下ろします。これが一撃目です。次に、左足を一歩踏み込みながら、前進力を乗せて右袈裟に斬ります。これが二撃目です。

そして、下段で残心、正眼に構え、1歩引いて血振るいです。

ポイントは、最初の下方から斬り上げる抜き打ちも一つの技であり、突き上げるように斬り上げるということです。また、ここから素早く、間髪入れずに切先返しして斬り下ろすこと、この斬り上げから斬り下ろしが一拍子で行われることが大事です。

【六本目】受流

「受流」は、前八・基本練技における受流しを使った抜刀術です。

この型では、受流しから攻撃をするという流れの中で、前八で学んだ受流しをより使える形に鍛練します。

六本目受流は、抜刀術の中でははじめて左右の敵を想定した内容になっています。

まず左足から歩み出し、3歩目で左の敵を察知し、鯉口を切ると当時に左の敵に視線を向けます。そのままさらに4歩目を踏み出したところで相手が斬りかかってくるため、身体を正面に向けたまま左に足を踏み込み、同時に抜刀し、左の受流し(片手)の姿勢になります。これで敵の攻撃を受けます。

そして、受けられた相手は1歩下がるため、こちらは1歩前進しつつ左袈裟に斬ります。ここまでが一撃目です。

次に、一撃目の直後に正面から敵が斬りかかってくるため、すぐさま正面に視線を移しつつ受流しします。そして、その場で身体を半身から半身へ転換しつつ、身体を重力に従って真下に落としながら、右袈裟斬りの軌道に近い軌道で、敵の胴を一刀両断します。これが二撃目です。

そして、その場で下段で残心師、足を入れ替えながら正眼に構え、1歩下がって血振るいします。

二撃目の斬りは「体落とし」と言われ、自分の重心を大きくしたに落としながら、そこで生まれたエネルギーを使って斬る動きです。これは、最初は正中線を維持しながら、真下に重心を落とすというのがなかなか難しいのですが、鍛練を繰り返すうちにできるようになります。

【七本目】張受

張受とは、敵と打ち合う中で敵の太刀を、自分の太刀で張るようにして受ける技のことです。

「張るような受け」というのは想像しにくいかもしれませんが『五輪書』の「水の巻」には、以下のように記載されています。

張り合わせる具合は、それほど強く張るわけではなく、また、受けるということでもない。敵の打ってくる太刀に応じて、その太刀を張り受けて、すかさず張った時よりもさらに速い太刀筋にて敵を打つことである。敵の太刀を張ることにより先を取り、打つことによって先を取るということが肝要なのである。

『新編真訳五輪書』p.172

実際には、稽古の中で「張る」という感覚を身につけていくしかないのですが、強く敵の太刀を払う(ちょっと感覚は違うのですが)ような受け方です。受流しとは、受の性質が異なります。

抜刀術における「張受」の動きとしては、まず右足から歩み出し3歩目で右の太刀を察知しつつ鯉口を切り、5歩目を踏み出した瞬間に相手が斬りかかってくるため、6歩目を右に、右足で踏み込みつつ横抜打ちの変化技で抜刀し、斬りかかってくる相手の太刀を右から左へ強く張って受けます。

そして、その張った刀をそのまま切先返しし、右袈裟で敵を斬り下ろします。これが一撃目です。

すると、自分の背後(最初の位置からすると左側)の敵が抜刀しようとするため、すぐさま身体を反転させつつ左足で踏み込み、刀で相手の抜刀しようとする小手を押さえます。そして、その刀を反転させ、その場で身体を飛び違えて入れ替えながら、正面切りで斬り下ろします。これが二撃目です。

そして、その場で下段で残心し、正眼に構え、1歩下がって納刀です。

このように、抜刀しながら行う最初の技が「張受」です。五輪書の記述にもあるように、受けたらすぐさま切先返しして斬る、というところがポイントです。

【八本目】袈裟斬り

八本目の「袈裟斬り」は、以前は「片手突き」という名前の技でしたが、数年前に九本目が新たに追加されたため、名称も「袈裟斬り」に変更になりました。

これは、その名のとおり袈裟斬りを鍛練する抜刀術の型です。

右足から歩出し、3歩目で右の敵を察知し鯉口を切り、5歩目を踏み出しながら身体を真横に向けて、その場で抜刀し、6歩目をすぐさま右足で踏み出すと当時に、左袈裟に斬ります。これが一撃目です。

次に、背後にも敵がいるため、すぐさま身体を転換させ、右足を一歩踏み込みつつ片手で敵の頸動脈を刺します。

刺したらすぐさま一足分下がりつつ正眼に構え、1歩引いて納刀します。

この型は、一撃目の袈裟斬りをいかに素早く、敵より速く抜刀して行うか、ということがポイントです。

【九本目】片手突き

九本目の片手突きは、数年前に追加された新しい型です。

左足から歩出し、3歩目で左の敵を察知すると同時に鯉口を切り、4歩目を踏み出すと同時に刀を自分の身体からできるだけ離れないようにしながら、真横に抜刀し、左足を左に踏み込むと同時に、左にいる敵の脇腹を切先で突きます。これが一撃目です。

次に、自分の背後にも敵がいるため、すぐさま身体を転換しつつ左・右と2歩踏み込みながら逆回転の切先返しで、左袈裟に斬り下ろします。これが二撃目です。

そして、その場で下段で残心し、正眼に構え、1歩引いて納刀です。

この型は、特に一撃目の片手突きを素早く、間髪入れずに行うのが重要なポイントっです。真横に抜刀するというのも他の抜刀術の型にはない技法ですので、初心者には難しいポイントかもしれません。

しかし、これも繰り返し鍛練することで確実にできるようになります。

【十本目】是極一刀

是極一刀は、抜刀術の最後の型です。

動きとしてはシンプルで、右足から歩み出し、3歩目で鯉口を切り、4歩目で抜刀をはじめ、6歩目を踏み込むと同時に正面切りで斬り下ろすという技です。

そして、他の型と同じように、上段で残心し、正眼に構え、1歩下がって納刀です。

この是極一刀は、ここまでの抜刀術を総括するような意識で行います。

つまり、他の抜刀術の技よりも、特に勝負心を強く持ち、敵を一刀両断にする意識を持ち、強い気合いを入れて行ことがポイントです。

抜刀術のポイント

以上が抜刀術の各技の解説でした。

抜刀術のポイント①まずは正確に鍛練する

抜刀術は、最初は初心者にとってはなかなか難しい動きです。したがって、最初は足の歩みと上体の技を一つ一つ一致させ「いち、に、さん」と数えながら鍛練します。

そして、正確にできるようになるに連れて、技の継ぎ目をなくしていくのです。

抜刀術に限りませんが、ここで勢法(型)には「正速強威」という教えがあります。

これは、まずは正しく、次に速く、次に強く、最後に威厳あるように技を行うという教えです。

初心者のうちは、まずは徹底的に正しい技ができるように繰り返し、少しずつ速さや強さの要素を追加していくように鍛練していくことが重要です。

抜刀術のポイント②気合いを強く

二天一流の勢法(型)では、すべて声で気合いを入れながら行います。

この気合いについては、私は宮田師範から「敵を声だけで圧倒できるように気合いを入れる」と教わりました。

そのため、抜刀術でも仮想敵を声だけで威圧し、声によってうろたえさせて、隙を突くって斬る、という意識で行うことが大事です。

玄信会の体系では、抜刀術の後にようやく正規の体系である「勢法一刀之太刀」に入っていきますので、次回は「勢法一刀之太刀」について詳しく解説します。

おすすめ記事一覧

-鍛練体系
-, ,

© 2024 兵法二天一流玄信会・東京支部