【二天一流の技法「切先返し」】片手で刀が速く振れる理由

二天一流剣術の技 鍛練体系

二天一流玄信会では、抜刀術、一刀、小太刀などのすべての勢法(型)が「二刀流として技を身につけるため」のものとして体系化されています。

他流の二刀流や、他の二天一流の派の中には、二刀流はあくまで一刀の鍛練のためのものであるとか、特殊な状況での戦い方として鍛練することが多いようです。

しかし、二天一流玄信会では、二天一流は二刀流の主体の流派であり、すべての勢法(型)を二刀流の鍛練のために行う、というスタンスを明確にしています。

このように言うと剣術初心者の方から、

「片手で重い刀は振れないはず」

「日本刀は両手で振るようにできている」

「二刀流なんで一刀より遅く、弱いはず」

と思われてしまうことがあります。

確かに、常識的に考えれば両手で刀を振る方が速く、重い斬りができるでしょう。

そこで今回は、なぜ二刀でも速く、重く刀を振ることができるのかという点について「切先返し」という技法から解説します。

切先返しとは

切先返しとは、二天一流の勢法(型)の中で多用されている、ある技法のことです。二天一流の二刀の勢法(型)の中では、ほとんどの斬りや受けが切先返しで構成されています。

動きとしては、握った刀が大きく身体の横を通って円を描き、遠心力によって切先から敵に向かって飛んでいくような動きです。

剣道の振り上げ、振り下ろしは、自分の手首や肘、肩関節を支点にして、腕の力で振り上げ、振り下ろします。二天一流でも、一刀の勢法(型)では似た動きをするのですが、二刀ではこのような動きをしないのです。

なぜなら、このような振り上げ、振り下ろしは、

  • 振り上げ、振り下ろす瞬間に絶対に動きが止まる
  • 腕の力を使うため、片手では筋力不足

というデメリットがあるからです。

そのため、両手で一刀を持っている人と、片手で一刀を持っている人が、同じ動きで「せーの」で斬り下ろせば、当然筋力で勝る両手の人が勝つでしょう。

切先返しは、この問題を克服した動きです。

これから説明するように、切先返しは自分の体を大きく前進させ、その力を使って刀に円運動をさせ、遠心力を使って斬る技法です。

そのため、あくまで腕の働きは、遠心力を殺さないように刀の軌道を誘導することと、遠心力に+αで力を乗せる程度なのです。

それでは、その動きのメカニズムを解説します。

片手で刀を速く振るメカニズム

二天一流が片手でも速く振れる理由

まず、切先返しで斬る場合、動きのスタートは体からです。足を踏み出し体を前進させると、木剣は慣性の法則によってその場に留まろうとします。

この時、右手で柄をつかんでいるため前進する力によって柄が押されます(正確には、右手は前方・上方に向かって斜めに上がる形になります)。

そのため、木剣の柄側は前に向かって進み、切先側はその場に留まろうとするため、木剣は真ん中当たりが中心となって、円運動を描き始めます。

この働きを簡単に試すことができます。

ボールペンなど棒状のものを掌の上に立て、その状態で腕を前方に速く伸ばしてみましょう。そうすると、ボールペンは自分の体側(腕を伸ばした方向とは逆側)に倒れ込んでくるはずです。

この働きが、切先返しの初動のエネルギーになります。

体はさらに前進し、木剣の切先は円運動をして下・後方に向かって落ち、背中側を通って上方に振り上がっていきます。

ここまでが、いわば振り上げの動きです。

ここから斬り下ろすのですが、この振り上げの時の円運動をそのまま止めず、右手を振り下ろしていきます。右手を振り下ろすことで、円運動がそのまま斬りの動きに繋がるのです。

こうして、振り上げから斬り下ろしまで動きを止めず、前進する力と遠心力を使って、筋力に頼らずに速く振ることができるのです。

この動きに慣れたら、ここに自分の体重を乗せることで重い斬りになりますし、遠心力を殺さずに自分の筋力をプラスして振ることも可能です。

以上が、片手でも速く、重く刀を振ることができる「切先返し」のメカニズムです。

速く振れなくても戦えるのが二刀流

ここまで刀を速く、重く振るということを前提に説明してきましたが、さらに言えば、速さ、重さには頼らない戦い方も、二天一流なら可能です。

たとえば、

  • さまざまな拍子を状況に応じて使い分ける
  • 受けで敵の動きを封じて攻撃に移行する

ということができますし、さらに二刀を持って一重身(体を一枚の板のようにした姿勢)にすると、一刀よりも間合いが広くなる分、間合いのアドバンテージもあります。

また、片手で刀を使う方が刀を自在に使えるため、軌道のバリエーションが増えるという点でも強みがあります。

もちろんこれらは二刀の動きに習熟する必要があるのですが、いずれにしても、

「片手持ちでは両手持ちに対して不利である」

ということはないのです。

今回は切先返しという技法のみを取り上げましたが、他の動きについても精妙な、合理的な動きで構成されているのが、二天一流の特徴です。

今後は、その他の技法についても解説していきます。

コメント

  1. […] […]

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