二天一流の二刀流の型8

鍛練体系

【二天一流剣術の体系⑤】勢法二刀合口で二刀流を鍛練する

これまで、二天一流玄信会の体系について「前八」「抜刀術」「勢法一刀之太刀」「勢法一刀小太刀」と解説してきました。

今回から、ようやく二刀流の勢法(型)である「勢法二刀合口」について解説します。

勢法二刀合口は、全部で14本の勢法(型)で構成されていて、実際に体系に組み込まれているのは10本です。前半5本が二刀の基本型であり、後半5本は「漆(うるし)・膠(にかわ)」のように相手に密着し、技を行う勢法(型)です。

この記事では、勢法二刀合口についてすべての技を動画、画像付きで詳しく解説しています。

それでは、二天一流玄信会の体系の中における、勢法二刀合口の役割から解説します。

勢法二刀合口の役割

勢法二刀合口は、二天一流における二刀流の技法を学ぶための体系です。

勢法二刀合口には14本の勢法(型)がありますが、14本は以下の3つに分かれており、それぞれに役割があります。

  • 切差
    切差は、二刀合口の前半5本のことです。敵が斬ってくる一瞬の差を見きって斬るため「切差」という名前がついています。この切差5本で、二刀の基本的な技法を学びます。
  • 漆膠
    漆膠は、切差に続く5本の型です。敵に対して深く入身し「漆(うるし)、膠(にかわ)」のように敵に密着し、離れないようにしつつ攻撃します。
  • 奥義
    奥義は、二刀合口の最後の4本の型で「一拍子」「二之越」「流水」「紅葉」の4つがあります。ただし、奥義の4本は玄信会の正規の体系には加えられておらず、勢法五法之太刀という二刀合口に続く勢法(型)を学んだ後に、口伝によって伝えられます。したがって、この記事では解説しません。

勢法二刀合口のポイント

勢法二刀合口の具体的な内容に入る前に、二刀合口全体の重要なポイントを解説します。それより先に具体的な内容を知りたい方は、勢法二刀合口の10本の型の解説からお読みください。

一重身から一重身への転換

これまでも前八や抜刀術、一刀、小太刀でも繰り返してきたことですが、二刀合口でも重要なのは「一重身から一重身への転換」です。

しかし、二刀を持つと、型によっては正面を向いて行おうとしてしまうことがあります。特に最初の段階では、はじめて二刀の型を学ぶため、これまでに身につけてきた一重身を忘れ、身体を正面に向けてしまうのです。

しかし、一重身という姿勢は二刀にこそ必要なものです。

なぜなら、二刀では片手で太刀を持つため、両手で持つ相手にはパワー、スピードで負けてしまうためです。この片手で持つことのデメリットを克服できるのが、一重身という姿勢なのです。

一重身になり、一重身の姿勢に沿うように太刀を振ると、後ろ足から腕まで力が伝わり、全身の力を太刀に乗せることができます。

二刀でこそ、この一重身の強さを最大限活かせるように、一重身をより意識して鍛練することが大事です。

腕力に頼らない

二刀合口では、はじめて本格的に二刀の型を学びます。

そのため、正しく技を行おうとして腕力に頼った斬りをしてしまうことがあります。しかし、腕力に頼ると木剣の重みを利用できず、かえって軽い斬りになってしまいます。

また、斬りが伸びず、技が小さくなり、その分斬撃力も弱まります。

さらに、腕力を使うと体幹の力や動きを使えず、その分斬りが弱くなってしまいます。

二刀で最大限強い斬撃を行うためには、一重身になり、刀の重みを活かして、体幹の力で斬ることが大事なのです。

切先返し

勢法二刀合口では、ほとんどの勢法(型)で切先返しを使います。二刀を使う場合、斬りの動作は切先返ししか使わないからです。

切先返しとは、刃を上に向け、突きながら斬り上げていき、空中で切先を返して刀の軌道を変え、今度は斬り下ろしていくという技法のことです。

通常の「まっすぐ振り上げ、斬り下ろす」という斬り方と異なり、太刀が止まることがありません。また、遠心力が生まれるため、遠心力を使って斬撃力を生み出すことができます。

ただし、特に片手で切先返しすることは難しく、見た目はできているように見えても、実際には腕の力で振り回してしまっていることもあります。

切先返しは、木剣の重みを遣い、刀(木剣)の軌道を腕の力で操作しないように行うことがポイントです。

勢法二刀合口切差5本の型の解説

それでは、まずは勢法二刀合口の前半5本である、切差について解説していきます。

以下の動画で、切差5本の勢法(型)をすべて紹介しています(一部、同じ型を繰り返している可能性があります)。

一本目:切差打留

切差打留は、敵の斬りに対して受けと同時に胴を斬る技です。

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流れとしては、右足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを小太刀で受け、同時に基本練技の「横抜打ち」と同じ軌道で、打太刀の胴を真横に斬ります。

流れとしては、これだけのシンプルな勢法(型)です。

切差打留のポイントは以下の点です。

  • 踏み込み、受け、斬りが同時
    最初の段階では難しいですが、この技は踏み込みと小太刀での受け、太刀での斬りが同時になることが大事です。
  • 真半身になる
    勢法二刀合口すべてで真半身は重要ですが、切差打留では、小太刀で受ける時に正面に身体が向きがちです。ここで身体を正面に向けないように、真半身を特に意識します。
  • 刀(木剣)全体を使って斬る
    太刀で斬るとき、片手だと腕の力で振り、刀(木剣)の一部しか使わない小さな斬りになりがちです。そのため、刀(木剣)の鍔元から切先までを使い、大きく斬ることが大事です。
    組太刀の場合、打太刀の胴で寸止めする必要がありますが、その時も動作が小さくならないように意識します。
    そのため、使う筋肉としては脇下・背中の筋肉を使い、肩・腕の筋肉は使いません。右肩が上がっていたら、肩や腕の筋肉を使っているということになります。

二本目:切差払斬

切差払斬は、敵の斬りを身体全体でかわし、小太刀で受けると同時に太刀で敵の腕を斬る勢法(技)です。

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流れは、まず右足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを右に体を捌いてかわします。この時、身体は一重身で二刀を左右に開いている形になります。

かわしたら、即座に二刀を交差させ、小太刀で打太刀が斬った直後の太刀を押さえ、右手の太刀は交差させたところから、真横に斬ります。この軌道も、前八の「横抜打ち」の軌道です。

組太刀の場合は、打太刀の腕で寸止めします。

切差払斬のポイントも、切差打留と同じく、刀(木剣)全体を使って斬ることです。ただし、刀(木剣)全体を使って大きく斬ろうとすると、刀(木剣)を体の後ろに引いて、勢いをつけようとしてしまいがちです。

しかし、これでは腕の力を使った斬りになってしまうため、あくまで腕・肩の力を否定し、体幹を使って斬ることが大事です。

三本目:一拍子外払

一拍子外払は、向かってくる敵の攻撃をかわしつつ、逆回りの切先返しで敵を斬る勢法(型)です。

小太刀を外向きに回転させて敵の太刀を受けることから「外払」という名称が付いています。

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流れは、右足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを右に身体を捌いてかわします。

かわすと同時に小太刀を外回りに回転させて、打太刀の太刀を押さえ、同時に右手の太刀は逆回転の切先返しで打太刀の頭部めがけて斬り下ろします。

一拍子外払のポイントは以下の点です。

  • 小太刀での払い受けは肩甲骨を使う
    一拍子外払では、小太刀を外回りに回転させて、敵の太刀を受けます。この時、手首や肘関節を使って回転させることもできますが、肩甲骨を使って回転させるようにします。体幹の働きを使うことで「背中の力を使える」「大きな動きで払い受けできる」という利点があるからです。
    また、この受けは、自分の正面に小太刀の軌道で「バリア」を張るような動作を意識して鍛練します。
  • 小太刀と太刀の動きを一致させる
    これも他の勢法(型)と同様ですが、小太刀による受けと太刀による斬りの動作を、完全に一致させることが重要です。これが「一拍子」ということです。
  • 身体の捌きは最小限にする
    一拍子外払は、3歩目で身体を捌いて打太刀の斬りをかわしますが、このとき他の勢法(型)と同じように、さばきは最小限にするべきです。できるだけ打太刀との間合いを詰めることで、受け・斬りにより体重を乗せて強くすることができるからです。

四本目:一拍子内払

一拍子内払は、敵の攻撃をよけつつ、順回転の切先返しで敵を斬る技です。

小太刀を内向きに回転させて敵の太刀を受けるため「内払」という名称になっています。

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流れは、右足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを、右に身体を捌いてかわします。この時、二本目の切差払斬と同じように、両手を左右に開いて体全体で真半身になります。

この3歩目と同時に、小太刀を内回りに回転させて打太刀の太刀を受け・押さえ、太刀は順回転の切先返しで、打太刀の頭部をめがけて斬り下ろします。

一拍子内払のポイントは、一拍子外払と同じです。

五本目:流水打留

流水打留は、敵の斬りを一度けん制し、次に敵の攻撃を誘い、斬ってきたところをかわしながらこちらが斬る、という勢法(型)です。

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流れは、右足から3歩進み、3歩目と同時に斬ろうとする打太刀に対し、二刀で顔を突くようにしてけん制します。この時、両足は揃えます。

打太刀は斬りを躊躇するため、即座に二刀を左右に開いて隙を見せ、打太刀の斬りを誘います。この時、両足を揃えたところから、右足のみ一足分引きます。

打太刀が再び正面から斬ってきた瞬間に、左足を引いて真半身になって斬りをかわし、即座に二刀で打太刀を斬ります。この時、右手の太刀で打太刀の頭を斬る形になっています。

流水打留のポイントは、以下の点です。

  • 二刀での突きの意識
    最初に二刀で打太刀の顔を突き、けん制するところでは、実戦では、そのまま二刀で突いて敵を倒してしまっても良いです。組太刀でも、二刀でそのまま本当に突く意識を持つことが大事です。その意識で突かなければ、けん制にならず、敵に動きを変化させて別の攻撃をする余裕を与えてしまうからです。
  • 敵の攻撃を誘う意識
    けん制の後に二刀を左右に開いて敵の攻撃を誘いますが、この時に大事なのが「拍子」です。拍子がずれると、敵は正面切りではなく別の攻撃をする余裕ができてしまいます。けん制後に絶妙な拍子で二刀を開くことで、敵の動きを操るかのように正面切りに誘い込み、かわして斬ります。
    これは、組太刀との鍛練を重ねることで、少しずつ拍子が分かってくるものです。
    この敵を操るかのような拍子について、宮田師範からは「二刀の先から敵の体に糸がついてて、こちらの動きで敵を操るような意識」で鍛練するように教わりました。
  • 全身で真半身になる
    けん制した後、全身を開いて真半身になりますが、この身体の捌きが不十分だと斬られてしまいます。ここでも、全身で一瞬にして一重身になることが大事です。

勢法二刀合口漆膠の型の解説

次に勢法二刀合口の後半5本である、漆膠について解説していきます。

以下の動画で、漆膠5本の勢法(型)をすべて紹介しています(一部、同じ型を繰り返している可能性があります)。

一本目:漆膠之突・左

漆膠之突・左は、敵の斬りを入身と同時に二刀で受流し、即座に二刀で敵の太刀を押さえ、押し込み、喉元を突く勢法(型)です。

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流れは、左足から3歩進み、3歩目と同時に打太刀の正面切りを二刀での受流で受け、すぐに右足を踏み込み身体を転換し、二刀で打太刀の太刀を押さえます。

押さえたら、打太刀は後ろに太刀を引いて抜こうとしてきますので、二刀で押さえたまま、身体全体を密着させて前進し、打太刀に太刀を引き抜かせず、数歩進んだところで右手の太刀で喉元を突きます。

漆膠之突き・左のポイントは以下の点です。

  • できるだけ身体の捌きでかわさない
    最初の二刀での受流は、一刀での受流しと同じ動きで、一刀から二刀に変わっただけです。そのため、これも身体を外に捌いて斬りをかわすのではなく、真っ正面から入身して受ることが大事です。「受流」の技そのものを上達させるためです。
  • 受けから押さえの間も太刀を密着させる
    二刀で受流した後、すぐに身体を転換させて二刀で太刀を押さえるのですが、この間、打太刀の太刀に、二刀を密着させたまま押さえにいく意識を持つことが大事です。太刀から離れてしまうと、打太刀が動きを変化させて別の攻撃に移る余裕を持たせてしまうからです。
  • 打太刀に身体全体を密着させる
    二刀合口漆膠は、前述のとおり「漆」「膠」のように、ぺたぺたと敵に密着して攻撃する技法です。そのため、漆膠之突では、二刀で押さえると同時に打太刀に右半身を密着させます。具体的には、打太刀の胸・肩にこちらの右肩・腕が密着し、打太刀の腰にはこちらの腰が密着し、こちらの右足は打太刀の左足に密着するような姿勢です。
    最初は、肩だけを密着させて腰が引けてしまったり、腰を密着させて肩が離れていたりとしがちですが、繰り返す中で全身で密着する「漆膠」の身体感覚を身につけていくことができます。
  • 絶対に動けないように押さえ・前進する
    二刀で押さえる時は、打太刀に「引く」以外の身動きができないように押さえることが大事です。そのために、打太刀の持つ太刀を押さえる二刀に自分の体重を最大限乗せ、後ろ足で地面を押す力で打太刀を下がらせていく鍛練をします。
    宮田師範の漆膠之突では、本当にまったく身動き取れず、太刀が何かでくっつけられたようにびくともせず、さらに前進してくる力にもまったく耐えられませんでした。自分の身体が勝手にコントロールされるような感覚です。
    正しい方法で何年も鍛練を積んだことで身についた技法なのだろうと思います。

二本目:漆膠之突・右

漆膠之突・右は、漆膠之突・左をそのまま逆に行う勢法(型)です。

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流れは、右足から3歩進み、3歩目と同時に二刀で打太刀の正面切りを受流し、即座に身体を転換して左半身で打太刀の太刀を二刀で押さえます。打太刀は太刀を抜くために引こうとするため、合わせて身体を密着させたまま前進し、数歩進んだところで太刀で打太刀の喉元を突きます。

漆膠之突・右のポイントは、漆膠之突・左と同じです。

三本目:入身

入身は、斬りかかってくる敵に対し、まっすぐ深く入身をかけると同時に、小太刀で斬りを受け、太刀の柄頭で胸を、肘で水月を突く勢法(型)です。

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流れは、右足から3歩進み、3歩目と共に深く入身をかけ、小太刀で打太刀の正面切りを受け、同時に右肘で水月、太刀の柄頭で打太刀の右胸を突きます。

入身のポイントは、とにかく深く、素速く入身をかけることです。シンプルですが、深く入身をかけるほど強い威力を出せる技です。

四本目:石火之打

石火之打は、陰陽交差(十字)で敵の斬りを受け、払い、払った勢いを使って切先返しで敵を斬る勢法(型)です。

石火之打は、細川忠利が、宮本武蔵に対して無念無想のうちに使い、二天一流の神髄を体得した技だという伝承があります。

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流れは、左から3歩進み、3歩目と同時に陰陽交差(十字)で打太刀の正面切りを受けます。受けると同時に右半身になり、入身する力を使って打太刀の太刀を、打太刀の身体の後方に向かって払い、そのままその勢いを使って切先返しして、近距離で打太刀の頭めがけて斬り下ろします。

石火之打は、勢法一刀之太刀「数喜」と同じ構造を持つ勢法(型)です。従って「数喜」と同じく、以下の点がポイントになります。

  • 陰陽交差でねばりをかける
    陰陽交差(十字)で受けたら、ねばりをかける、すなわち打太刀の太刀と二刀の接点を密着させて離さないようにし、そのまま入身をかけます。入身をかけて払うまで、ずっとねばりをかけたままにします。
  • 陰陽交差は「石火」のように一瞬
    陰陽交差での受けは、最初の段階ではしっかり受けて、次の払いの動作に移行します。しかし、実際には「石火」というのは一瞬ということですので、十字で受ける形になるのは一瞬です。実際には、瞬間的に十字で受けると同時に払うような動作になります。ただし、瞬間的に受ける場合も、ねばりをかける意識を持つことが必要です。
  • 腕ではなく入身で払う
    陰陽交差で受けた後に打太刀の太刀を払いますが、この時腕の力は使わず、入身する力を使って払うようにします。この時、打太刀の正中線に向かって入身することで、入身の力を効果的に腕に伝え、払いの力に転化することができます。

五本目:十字愁猴之身

十字愁猴之身は、二刀で敵の斬りを受け、そのまま敵に向かって密着するようにし、敵を押し込みつつ喉元を突く勢法(型)です。

「愁猴」とは腕が短い猿のことで「愁猴」になったつもりで行う技法ということです。腕が短いということは、敵に接近・密着しなければならず、これが十字愁猴之身のポイントです。

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流れは、まず左足から3歩進み、3歩目で陰陽交差(十字)によって打太刀の斬りを受けます。受けたら、二刀で強くねばりをかけつつ、打太刀に密着するように前進します。それと同時に陰陽交差(十字)で受けた瞬間に肩甲骨を伸ばし、打太刀の太刀を上・後方に向かってすり上げるようにし、打太刀の胸部分に隙をつくります。その瞬間、二刀で打太刀の腕を押さえ、そのまま前進して打太刀を後退させます。

この時、入身によって打太刀に体重を預けるようにしつつ前進します。

数歩後退させたところで、小太刀で打太刀の腕を押さえたまま、右手の太刀で喉元を突きます。

十字愁猴之身のポイントは、以下の点です。

  • 陰陽交差は石火之打と異なる
    十字愁猴之身と石火之打は、共に陰陽交差(十字)で敵の斬りを受けますが、その動きが若干異なります。石火之打は、下から二刀を大きく打ち上げるようにして受けますが、十字愁猴之身は、二刀を最短距離で斬るようにして受けます。
  • とにかく入身を強くかける
    十字愁猴之身で大事なのは、強く入身をかけて打太刀の重心を崩し、下がらせていくことです。そのため、他の勢法(型)よりいっそう入身を強くかけ、体重を二刀に預けるようにして前進する意識が重要です。
  • 手の内を強くして死に手にならないようにする
    上記のように強く入身をかけますが、その体重は二刀を通して打太刀に預けます。そのため、手の内が弱いと死に手になり、手首が曲がってしまいます。そうなると、二刀での押さえが弱くなり、入身の力を効果的に伝えることができず、打太刀に変化される余裕を持たれてしまいます。そのため、特に手の内を強くする意識が重要です。
  • 「たけくらべ」の意識を持つ
    十字愁猴之身では、陰陽交差(十字)で受けた後、前進するときに「たけくらべ」の教えのように、全身を伸び上がらせるようにする意識が大事です。前進することに意識が行きすぎると、重心を低くしがちですが、重心を低くすると打太刀から上から潰されてしまいます。
    「たけくらべ」の意識を持てば、上から潰されないだけでなく、打太刀の太刀をすり上げるようにして重心を崩すことができます。

勢法(型)の後の動作について

以上が勢法二刀合口切差、漆膠の具体的な技法の解説です。

勢法二刀合口では、それぞれの勢法(型)の後に続く動作があります。

具体的には、それぞれの技が終わった後に中段に構え、そのまま隙を見せないようにしつつ数歩全身し、打太刀を後退させ、また数歩下がり元の位置に戻ってくるという動きです。

この中段の構えでは、隙を見せないことが大事で、もし打太刀が何らかの攻撃を加えようとしてくれば、すぐに対応できるような意識を持っておきます。

また、中段は、太刀と小太刀の切先が重なり、正面から見るとどちらも同じ長さに見えるように構えることが大事で、このように構えることで隙がなくなります。逆に、少しでも切先が離れると、打太刀の太刀が間から侵入し、突き・斬られることになってしまいます。

※これは二天一流における非常に基本的かつ重要なポイントなので、前八の「五法之構」で毎回の稽古時に鍛練しつづけ、勢法二刀合口を習う段階では、意識せずとも自然にできるようになっているものです。

組太刀では、あくまで決まった勢法(型)の通りに稽古しつつも、互いに隙があれば攻撃する意識を持ち続けることが大事です。

時に本当に攻撃することで、どこに隙があるのかを互いに知らせることができます。

以上が、勢法二刀合口の解説でした。

次回はいよいよ、玄信会で最後に習う勢法(型)である「勢法五法之太刀」について解説します。

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