二天一流の二刀流(五法)3

鍛練体系

【二天一流の技法「一重身」】二刀を扱うために必須の体捌き

二天一流は、二刀流を主体とした流派です。

しかし、これまでの記事でも解説してきたように、二刀を扱うということは通常の一刀とは異なる身体操作をしなければ、一刀に勝つことが難しい現実があります。そのため、二天一流にはさまざまな、独特の技法が存在します。

そこで、これまで二天一流剣術独特の技法として「切先返し」「ねばりをかける」などを解説してきましたが、今回は、二刀を扱う上での必須の体捌きである「一重身」について解説します。

一重身とは

一重身とは、二天一流剣術における基本姿勢のことです。

二天一流玄信会においては、足幅を大きく開き重心を落とし、敵に対して半身になります。半身になり、自分の身体を左右に大きく開き、自分の両肩を結ぶラインと自分の骨盤のラインがねじれないようにした姿勢が一重身です。いわば、真半身に近い体勢です。

二天一流剣術の型「八相・左」二天一流の二刀流の型8

画像を見て分かるように、二天一流剣術では、一刀も二刀も、そして小太刀も抜刀術も、すべてこの一重身が基本姿勢になっています。

なぜこの姿勢を取るのかというと、一重身を取ることで、片手で一刀を持っても十分に速く、重い斬りができるからです。

一重身の意義①体重を乗せられる

二刀を扱う上では片手で大小の一刀を持ちますが、片手に一刀で両手に一刀を持った敵に勝たなくてはなりません。そのため、片手持ちでも敵を切れる速さや重さを生み出さなければなりません。

一刀を両手持ちする時の姿勢を考えてみてください。

両手で一刀を振る姿勢のまま、片手で一刀を振ろうとすれば、腕の力を中心にして振ることになります。当然同じフォームでは、両手持ちの敵に速さ、重さで負けることになります。

しかし、一重身になると、敵に対して自分の刀と自分の全身がすべて直線上に入ることになります。つまり、全身の体重を刀にすべて乗せることができますし、後ろ足で地面を押す力を、そのまま刀に乗せることができます。

さらに、一重身で前進しつつ「切先返し」することで斬りのスピードを生むこともできます。

※切先返しについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

【二天一流の技法「切先返し」】片手で刀が速く振れる理由

つまり、一重身になることで片手持ちでも速く、重い斬りが可能になるのです。

一重身の意義②間合いが広がる

さらに、一重身になると一刀に比べて間合いが広くなります。

二天一流剣術の型「合先打留」1二天一流の二刀流(五法)3

画像では分かりにくいかもしれませんが、普通の両手持ちでの正面切りと、一重身になっての片手切りをやってみると、一重身の方が間合いが広くなることが分かると思います。

それは、体を大きく開いているという理由もありますが、稼働させる部位が異なることも大きいです。両手持ちでの斬りは肩関節(流派によっては手首や肘関節も)を中心とした動きですが、一重身、片手持ちで振ると肩甲骨や胸背部を中心とした動きになります。

つまり、腕を長く使えるのです。

そのため、その分軌道が延びて間合いが広くなります。当然ですが、間合いを広く使えることは実際の戦闘においては大きなアドバンテージになります。

一重身での移動

二天一流剣術では、技をかける時は一重身のまま移動するのが基本です。

つまり、右半身の一重身から左半身の一重身へ。またその逆へと身体を転換し続けることで移動するのです。

※間合いを詰めるだけの歩みは「常の歩み(=普通の歩き方)」ですが、斬るとき、受けるときなどの攻防の中では、一重身から一重身への転換が移動法になります。

この一重身から一重身への転換で移動することには、大きな強みがあります。

それは、転換するときに全身で入身をかけることになることです。入身とは、敵に対して一重身で肩から接近するように深く入り込む体捌きのことです。入身をかけることで、受けも斬りも全身の力を使って行うことができるため、速く重い動きができます。

たとえば、斬り→受け→斬りという攻防をするときに、斬りは一重身だが受けは一重身じゃない、という動きをすると、受ける力が足りずに二度目の斬りに移行できない可能性があります。

しかし、すべての技を一重身で移動しながら行うことで、すべての技を効果的に敵に伝え、戦いを有利に進めることができるのです。

一重身の鍛練方法

一重身は、すぐにできるようになるものではありません。

形だけを真似ることはできても、実際に勢法(型)の中で行おうとすると姿勢が崩れたり、形は正しくても、刀に体重が乗っていなかったりすることがあります。

そのため、一重身は「前八」と「勢法(型)」の中で繰り返し鍛練していきます。

前八における一重身の鍛練

一重身は、まずは「二天一流の足構え」が正しく取れることが前提になりますので、まずは「前八」という最初に行う鍛練の中で「土台創り」として行います。

土台創りで鍛練することで、まずは止まった状態で正しい姿勢、一重身が取れるように訓練します。

次に「膝行」で、一重身から一重身への転換の体幹部の鍛練を行うことで、一重身から一重身への転換によって移動することを鍛練します。

さらに、前八の最終ステップである「基本練技」において、それぞれの基本的な技の動作の中で、一重身が取れるように訓練していきます。

これらの前八の鍛練を通じて、まずは一人で一重身の動きを正しく取れるように訓練することができます。

※前八について、詳しくは以下の記事で解説しています。

【二天一流剣術の体系①】前八(まえやつ)で身体操作・身体創りをする

勢法(型)における一重身の鍛練

前八では基本的に一人で正しい一重身の姿勢が取れるように鍛練しますが、それを実際の動きの中で使えるものにするのが、勢法(型)における鍛練です。

勢法(型)の中では、もちろん移動や斬りを行う時に正しい形で一重身が取れるように鍛練していくのですが、より重要なのは受けや押さえなど、敵に実際に力を伝える場面での鍛練です。

たとえば、勢法一刀小太刀ではすべての技で敵の手を押さえに行きますが、この時に正しく一重身ができていないと、敵の重心を崩すことができず、押さえも弱くなります。その結果、敵から手を振り払われたり、変化して別の技をかけられる危険性が出ます。

そのため、正しく一重身ができているかどうかを、実際に技が効いているか、という点からチェックすることができるのです。

同様の方法は、

  • 勢法一刀の太刀の「受流」「流討」「張付」
  • 勢法二刀合口の「漆膠之突」「石火之打」
  • 勢法五法之太刀の「上段」

などでも行うことができます。

一重身を効かせることができるようになると、技の鋭さや受け、押さえの強さがまったく違ってきますので、すべての勢法(型)の鍛練を通じて繰り返し鍛練することが重要です。

おすすめ記事一覧

-鍛練体系
-,

© 2024 兵法二天一流玄信会・東京支部